
【イラストより】一枚の銅版を槌(つち)で丹念に打ち出していって、立体の鍋(なべ)を仕上げる。
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第21回 銅のチロリ
 新潟県燕市 |
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上越新幹線の燕三条駅は、三条市と燕市の境にまたがっている。駅を出て東に出れば三条市、西に出れば燕市になる。信濃川の支流、中ノ口川を渡ると燕の市街地。背景に弥彦山がそびえている。越後一の宮、弥彦神社を懐に、後ろは波荒い日本海が広がっている。金属を加工する技術もそこから入ってきた。
三条は刃物、燕は洋食器や鎚起(ついき)銅器で知られる職人の町。その燕の伝統産業のルーツはキセルで、がん首や吸い口を打ち出して作っていた。鎚(つち)で起こす鎚起は、1枚の金属板を金づちでたたいて立体に形成する鍛金(たんきん)技術で、文字通り職人のたたき上げの技で作られる。
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鎚起職人の島倉板美さん(68)は、子供をひざの間に抱え込むようにして、鎚を打ち続けていた。銅の平板を火でなまして軟らかくし、鎚でたたいていく。
「銅は、ただたたけばいいわけじゃない。たたきすぎればゆがんだまま直らなくなる。子供を育てるのと同じだね」
鎚は常に一点を打つ。しかも、鎚の面全体が当たるわけではなく、中心の一点しか当たらない。腕の脇を締め、ひじを支点にして正確に打つ。左手は銅板を回しながら、鎚の当たる位置をコントロールしている。鎚目の跡が美しい亀甲模様に刻印されていく。
平板は、鎚でたたくとへこんだ厚み分がどこかにのびてゆがみが出る。そのゆがみを意識的に利用して立体形に打ちのばしていく。指先の感触で微妙な厚みやゆがみの差が分かる。丹念にたたくと金属組織が密になって丈夫になる。職人仕事は素材に新しい命を吹き込む仕事だ。
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銅の鍋は熱伝導率に優れている。お湯が早く沸き、焼け焦げが少ない。おでんやシチューなどの煮込み料理は、熱の対流循環によって芯まで軟らかくなる。卵焼きがふっくらきれいに焼ける。
また、銅には殺菌、防腐作用があって水が浄化されて腐りにくい。銅の花瓶にいけた花は長く美しく咲く。水やお茶をおいしくする。
チロリは酒の燗(かん)をする道具で、中に酒を注ぎ、鍋で沸かした湯に入れて燗をする。
銅のチロリを手元に、酒を飲んで驚いた。早く燗がつくだけでなく、均等に熱が伝わるので、酒がまろやかで、味がひと味もふた味も違う。「うまい!」と、思わずひざを打った。強くたたきすぎてひざがジンジンしたが、のど越しはまろやかだった。酒飲みにとって、この至福の時間は何ものにも代え難い。
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| 中ノ口川から望む弥彦山 |
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◆お取り寄せ
チロリ(150t)は1万3000円、フライパン(直径25センチ)1万7000円、両手煮込み深鍋(同22センチ)3万2000円。いずれも銅製。送料別。
TEL・FAX島倉堂(0256・63・5436、http://www.ne.jp/asahi/simakuradou/simakuradou/)。

葉の形の菓子器(8000円相当)を2人に。
はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を記し、郵便番号959・1272、新潟県燕市杉柳664の1、島倉堂「良品探訪プレゼント」係。1月28日必着。2月上旬発送。
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