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自在の編み、名人の手業   くらしの良品探訪タイトル
イラスト
【イラストより】3年目の青竹にこだわる。柔らかすぎず堅すぎず、丈夫。表皮をはいであるので、使い込むほど味わいが出る。
第34回
竹細工
竹細工
大分県庄内町


地図
 緑波打つなだらかな高原に女性の肩のような曲線を描いて由布岳がそびえている。そのすそには、日本屈指の温泉リゾート湯布院の町を抱いている。

 すがすがしい気分で隣の庄内町へ足をのばす。西大津留竹ノ中。いかにも竹に縁が深そうな土地に、優れた竹細工職人がいる。長年竹細工を趣味としてきた者にとっては、雲上の人だ。

 竹ノ中は、聞きしに勝る急峻(きゅうしゅん)な山の上にあった。空に向かって一気に登っていくような急斜面に、蛇行した狭い一本道に沿って人家が張り付くように点在している。所々に密集した真竹の林が影だまりを作っている。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 「いまは車があるけんいいけど、昔は下るも登るも一仕事だった」

 ナタを持つ手を動かしながら笑顔で迎えられる。佐藤千明さん(74)。この道54年。日本一の竹の町、別府をひかえてその名を知られる名人だ。

 佐藤さんは生活に密着した竹製品にこだわり続けている。研いだ米をあげたり、野菜を洗ったりする笊(ざる)やかごなどの台所雑器、いわゆる荒物。水切れがよく、風を通し、熱を持たず、丈夫で軽い。手入れをいとわなければ竹ほど機能バランスのとれた素材はない。しかも、使い込むほど味わいが出てくる。

 「けんど、いまの暮らしにあったもんを作らんと、荒物の技術は生き残っていかんなあ」

 佐藤さんは青竹にこだわっている。3年目の真竹を天日干ししただけの青竹で編む。丈夫な皮の部分を使い、薄皮一枚削って磨いてあるので、カビや汚れに強い。最初青かったものが、使っていくうちに黄色くなり、やがてあめ色になって味わいと風格がにじみ出て、愛着が増す。一生使い込める道具。職人の仕事冥利(みょうり)につきる。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 佐藤さんの手が踊る。竹が自在にしなって編み込まれていく。網目の文様と曲線。つややかな肌合いが美しい。がっしりとして、素手でさすっても少しもささくれてしまう部分がない。細部に配慮がほどこされている。

「一具多用」。ひとつでいろんな用途をこなし、現代の暮らしに溶け込める竹細工を目指している。笊やかごがマガジンラックや、整理かご、衣装入れ、オードブルかごなどに変身する。「賢い道具」とはそういうものだという。それには使う側も賢くならなければならない。

 道具への愛着は、日々の暮らしの慈しみにつながる。  


由布岳
別府市と湯布院町に
またがる由布岳

◆お取り寄せ
 買い物かごは1万1000円、食器入れ1万円、ミソこし800円。個別の注文にも応じる。送料別。はがきで注文。
 郵便番号879・5408大分県庄内町西大津留竹ノ中、青竹クラフト工房(TEL097・582・1131)。

プレゼント
 5月末までに注文した人の中から5人にざるをプレゼント。6月上旬発送。


(2004年4月21日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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