以前、我がマンションの部屋にはベランダが“東北西に三つ”あると書いた。
が、ベランダは数ありゃいいというものではない。
例えば外壁が高ければ、その分だけ日光がさえぎられることになる。条件のいい東向きのベランダでも、壁面から20センチの幅が使えなかったりする。
では曇りガラスの壁面ならどうかと言えば、確かに日射量はかせげる。だが、西向きだと夏は地獄だ。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
おまけに、我々はベランダに置かれた室外機の位置とも戦わねばならない。
俺(おれ)自身は原発反対派なので、どんなに暑い夏でも滅多(めった)にクーラーを使わない。半ズボンに上半身裸でタオルを首から下げ、うちわをあおいで過ごすのだ。が、そんな俺でも真夏の数日、ピーク時を避けて部屋を冷たくすることがある。
むろん、室外機からは異常な温風が出る。したがって、室外機の位置によっては、ベランダの無風地帯を帯みたいな感じで縦長に使う以外なくなってくる。
また、よくマンション高層階に憧(あこが)れる人がいるが、実はこれがベランダー的にはやっかいなのである。風が強く吹くために、小さな鉢を置くことが出来ない。ちょっと油断すると、すぐ横倒しになるからだ。
逆に丈の高い植物なら鉢も重くていいだろうと思ったら、これが大間違いである。茎も葉も壁の高さを越えた途端、強風をまともにくらうことになる。与えた養分のほとんどがその悲惨な状況への忍耐に使われ、植物はいじけてしまう。
ルーフバルコニーには俺も憧れるけれど、実際きちんと想像してみると苦労は絶えないはずだ。例えば、台風が来る度、鉢を部屋に取り込む必要に迫られる。高い壁の裏側に鉢を押し付けて暴風をやり過ごす秘策は、ルーフバルコニーでは通用しにくいだろう。風通しが良過ぎるのだ。
こうしてみると、ベランダ園芸界に好物件などひとつも存在しないことがわかる。誰もが等しく悪条件に立ち向かい、それぞれの知恵で春夏秋冬をしのいでいるのである。
だが、だからこそベランダーは互いを尊敬する。狭かろうが広かろうが、日当たりが良かろうが悪かろうが、我々はベランダという苦難を抱えた同志なのだ。