あけました。
さて、この数年、正月がやって来る度に、俺(おれ)の初忘れは決まってヒヤシンスなのであった。
ある年は球根をしまったまま出し忘れ、またある年は水を張った専用容器に入れたまま冷蔵庫内に置き忘れてしまうのである。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
特に後者の初忘れのダメージは大きい。なぜなら、御存知(ごぞんじ)のようにヒヤシンスを冷蔵庫で冷やすのは、出した時との温度差によって奴(やつ)をだまくらかし、正月に咲かせる手段だからだ。
つまり、俺の住む浅草が初詣で客でにぎわう三が日、目的を忘れてヒヤシンスを冷やし続けているのはまことに愚かしい行為であり、気づいた時はもう遅い。
あわてて冷蔵庫から出したところで、七草粥(がゆ)を食い終えてもまだ咲かないのである。ではなんのためにヒヤシンスは豆腐や豚肉の横で耐え忍んでいたのか。あるいは逆に、年末年始用に買いだめた食材の貴重なスペースを、なぜヒヤシンスに奪われていたのか。俺は自分を呪うことになる。
だが、今年はめでたい。俺は昨年末、羽子板市で盛り上がる浅草寺境内で鉢植え屋が露店を出しているのを見逃さず、さらにひと鉢3個ずつのヒヤシンスが植え込まれた鉢を素早く発見したのである。すでに花穂さえついていた。一瞬、赤と紫の2種類があると言われて迷ったが、初忘れのダメージを免れることが出来た喜びで結局は両方を購入し、一応交渉も欠かさず100円値引きしてもらった。実にめでたい話だ。
俺は赤い花が咲くと言われた方をキッチンのカウンターに置き、紫を東側ベランダに配置した。室内と室外で花期がどう異なるかを実験し、花を楽しむ期間をより長くする作戦だ。
今年はついている。すでに室内のヒヤシンスは、あの蝋(ろう)細工めいた小さな花をびっしりと赤く開かせ、次に紫が開花へのスタートを切るだろうことは確実である。俺はベランダーとしての恒例の初忘れを克服し、巧みにヒヤシンスを咲き分けさせたのだ!
ただ、ボケの様子がおかしい。昨年の冬の終わりに咲いたボケが知らぬ間に枯れ死んでいるらしいのだ。
世話のし忘れが、どうやら俺の初忘れになりそうな2005年新春である。