ブロッコリーを収穫いたしました。東側ベランダのプランターで栽培を続けていた、たった一株のブロッコリー。そいつが、どう見ても食べ頃ぎりぎりになっていたのである。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
杖(つえ)ほどの太さの茎がすくすく伸び、頂上にあのミクロの森のような花蕾(からい)をつけてから2カ月間。俺(おれ)はやつをいつ収穫すべきか、日々怠りなく迷い続けてきた。
俺は可能な限り、やつを巨大化させたかった。が、待ち過ぎれば、ぎっしり詰まった緑色の細い蕾(つぼみ)が長くなって、先端がすべて花開いてしまう。開けば菜の花と変わらない食感になる。
というわけで、大きさかブロッコリーらしさかという重大な選択を、俺はこれまでの間、時々刻々迫られていたのであった。
もう少し我慢すればもっと大きくなる、いやもう蕾が開いてしまいそうだ、待て待てここまで来たからにはじっと耐えよう……といった非常につましい自問自答が繰り返されたわけだ。
そして、自動的に答えは出たのである。花蕾の先がちょっと開きかけてしまったからであった。
ブロッコリーの巨大化を狙っていた俺は、結局若干の菜の花化を受け入れざるを得なくなり、いやおうもなくナイフを取り出して急いで収穫を済ませた。
運の悪いことに、俺はその前日から歯の治療を始めていた。左上の奥歯が痛み、かぶせ物を取るはめにおちいっていたのである。少しでも何かが触れれば激しく痛むため、俺の食生活はお粥(かゆ)に統一されていた。
そこにブロッコリーの収穫日が当たってしまったのであった。仕方なく、俺の夕飯はお粥とブロッコリーのゆでたやつという組み合わせになった。
俺の夢はそんな禅寺みたいな献立でブロッコリーを食べることではなかったのである。ぷっくりふくらんだブロッコリーをゆで、レタスか何かと混ぜてドレッシングをかけ、メーンがハンバーグあたり。明るく温かい食卓の、かけがえのない一品というやつだ。
それが、実際はメーンが粥なのであった。しかも俺は顔を右に傾けてしか物が食べられないのである。左側にブロッコリーが行かないよう注意して、俺はおそるおそる噛(か)んでみた。
菜の花の味だけがした。