シシトウはまだまだ実り続けている。小さな葉は虫にもやられず伸び、白い花は毎日新しく咲き、花は終わるとすぐに実となる。
このサイクルには抜群の安定性があって、まことに心強い。しかも、俺はシシトウにたいしていい場所を与えていないのである。とりあえずなんとか日が当たるという条件下で、やつはほとんど機械的にどんどん実を生産し続けるのだ。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
ただ、前にも書いたように、自家製のシシトウはかなり辛い上、料理にする際のバリエーションが限られている。あまり実られても……という悩ましさも存在しているのが現状だ。
そこで俺はシシトウの実をひとつ割り、中から種を取り出して植えてみることにした。食べずに使うという意味では名案であった。
シシトウはここでも抜群の安定性を見せた。植えて3日もすると土をかきわけて芽が立ち上がり、すくすくと伸び始めたのである。
俺はつくづく感心した。シシトウを育てる上で、失敗はあり得ないのではないかとさえ、俺は思った。植えれば芽が出る。出れば育つ。育てば咲く。咲けば実がなる。理想の植物だ。
読者諸氏に「こぞってシシトウを育てよ!」と声もかれんばかりに訴えたくなった俺は、しかし自分が買って来た苗がよかっただけだと困ると思った。苗が強ければ種も強いだろう。
ここはひとつ、シシトウ一般が育てやすいのかどうかを立証せねばならぬと考えた責任感の強い俺は、スーパーで1パック10本入りのシシトウを買い込み、そのうちの1本から種を取り出して植えてみた。
これがまた大成功なのであった。3日もすると土をもたげて芽が何本も立ち上がってきたのである。
長い間ベランダ園芸をやってきたが、これほど育てやすく、なおかつ収穫もあって見返りにも満ちた植物は珍しい。この事実をもって、俺は熱狂的なシシトウ支持を心に誓った。
しかし、問題なのは今、俺のベランダがシシトウだらけになっていることである。その上、台所には収穫したシシトウと、スーパーで買ってきたシシトウの残りが転がっている。
このままだとシシトウを主食に生きていくか、零細農家としてシシトウの販売経路を考えるかしかない。どうしたものか。