涼しい毎日である。
おかげで、困ったことが起きている。
夏に入荷したバナナをどうするかという大問題が、俺(おれ)を悩ませているのだ。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
二度目の付き合いであるそのバナナを、俺は今回ベランダで育てている。
ちなみに、最初のバナナは引っ越し前のマンションの室内に置かれており、2年ほどして枯れた。当時ベランダは狭かったが、南向きの広い窓があったから、多くの鉢があらゆる家具の上に鎮座していたものだ。
それが北向きの部屋に越すことになり、かわりに複数のベランダを俺は得た。今度は室内に置かれる鉢は最小限となり、残りの植物はベランダに出された。
したがって、俺は2回目のバナナも当然、外で育てたのであった。風に当たるのは生育上いいらしく、バナナは以前よりも元気に育った。葉は大きく広がり、他の植物の上に覆いかぶさって迷惑なくらいである。
ところが、いくら亜熱帯化しつつある日本とはいいながら、秋はいかにも秋らしい。気温がぐんぐん下がってくるにつれ、俺はぐんぐん不安になった。
果たしてバナナが秋を、さらには来るべき冬を室外で過ごし得るものなのか。
前回同様、室内に取り込めれば話は簡単である。しかしながら、新しい間取りにはその余裕がない。
小さな鉢ひとつさえ置き場所がないところに、バナナは直径1メートル強の勢いで葉を茂らせている。
そこまで勢いづかせてしまったのは俺である。肥料をせっせと与え、北側ながら午前中の日射がある特別な場所にバナナの鉢を置いたのだ。おかげで巨大な鳥の羽のごとく、バナナの葉は伸び伸びと育った。
書斎のど真ん中が唯一空いているのである。ただ、そこにバナナを置けば、俺は肩身の狭い思いをしながら仕事をするはめになる。育つ葉の邪魔にならないよう、机をずらし、本棚を移動させ、部屋の隅でせっせと文章を書くのだ。
つるべ取られてどころの話ではない。書斎はもはや書斎ではなく、ただの温室になる。俺はバナナ用の温室を間借りして、毎日仕事に励まなければならない。
このままバナナを枯らすか、部屋を植物に明け渡して苦難の生活を送るか。俺は今まさに追いつめられている。さあ、どうしよう?