いつもの園芸コーナーで桃を見つけた。接ぎ木による三色咲きで1750円。
すでに赤い花が幾つか開いており、次なるピンクの蕾(つぼみ)もぷっくりとふくらんでいる。残る花はまだ固い蕾の奥に隠れているが、白。すべて咲きこぼれたら、さぞ華々しいことだろう。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
枝々が下向きに湾曲し、蕾が綿毛めいたその桃の鉢を前にして、俺(おれ)は即購入を決めた。もうすでにベランダには鉢の置き場が見つからない現状なのだが、春を間近にした躁(そう)状態は抑えられない。
桃の鉢を持って園芸コーナーを意気揚々と進む俺の目に入ったのは、今度は梅であった。枝にびっしりと付いたえんじ色の蕾の先から、薄桃色の花が見える。お値段1300円。
置き場がないんだぞ、と自分に言い聞かせはしたのだが、それよりも桃が咲き終えた時、すぐに梅がバトンタッチしてくれるだろうという想像が勝った。結局こちらも買ってしまう。
両手に鉢を持った俺はレジ方向へ歩いたのだが、次に現れたのは桜の木であった。1メートルほどの高さで蕾は小さく、それが葉になるのか花になるのかさえわからない。それでも吉野桜が650円なら、手を出さずにはいられまい。
桃が咲き、梅が咲いたあとでついに桜が咲くベランダ。これで4月までのスケジュールがほぼ埋まったといっても過言ではない。
ただ、家に帰ってみると実際に置き場所がひとつもないのだった。ああ、嘆くべきは限られた面積!仕方なくしばらくの間は、三つの鉢を部屋の中に収納しておかざるを得なくなる。
まさか木のものを室内で育てるわけにもいかないから、早く何かを捨てなくてはならない。だが、その何かのチョイスが難しい。枯れてはいてもやがて芽をふく可能性があるのだし、そもそもどんな姿でも命のあるうちは育てるというのが俺の園芸道だからである。
あの鉢をこっちに寄せ、この鉢をひと回り小さく植え替え……と俺は頭の中で必死に整理をし続ける。それでもパンク状態のベランダでは妙案が出てこない。
浮かれて買い込んだ。春を前にしたベランダーの性(さが)である。その報いが来て、俺は手詰まりだ。本当にどうしたらよいものか。