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2004.4.16(金)更新  セリフを読む

 

知らざァ言って聞かせやしょう。
浜の真砂と五右衛門が歌に残した盗人の......

「白浪五人男」

勘九郎の弁天小僧菊之助(右)と八十助(現三津五郎)の南郷力丸=平成7年、歌舞伎座)
勘九郎の弁天小僧菊之助(右)と
八十助(現三津五郎)の南郷力丸
=平成7年、歌舞伎座
 このセリフが歌舞伎の中でも最も親しまれているのは、河竹黙阿弥の七五調の調子のよさと、これを言う弁天小僧に怪しい美しさと不良少年の格好良さがあるからだろう。

 「白浪五人男」の「浜松屋」の場。武家の息女と供侍(ともざむらい)になりすました弁天小僧と南郷力丸が金をだまし取ろうと浜松屋で大芝居を打つが、弁天が男とばれて開き直る。

 「婚礼の支度じゃという事は必ず言うてたもんなや」などと恥ずかしそうに出てきた娘が、「おらぁ尻尾(しっぽ)を出しちまうぜ」と帯を解いて緋(ひ)の襦袢(じゅばん)をはしょり、あぐらをかく。

 番頭の「どこの馬の骨か」を受けて「名せえゆかりの弁天小僧菊之助たぁ、おれが事だ」と見えを切る。

 いじっていた煙管(きせる)をポンと置いて、片肌脱ぐと見事な桜の彫り物。

 この倒錯した退廃美が、この芝居の見どころでもある。

 幕末・明治の名優5代目尾上菊五郎が19の時に演じて大当たりした芝居で、見た目が美しいのは、錦絵から出来た作品だから。音羽屋の家に受け継がれ、今も屈指の人気演目だ。

 今の菊之助が5代目を襲名した時も弁天小僧を披露したが、役者と役名が同じなのが何ともほほえましかった。ダイエットして臨むという今回の弁天小僧菊之助は勘九郎。三津五郎の南郷、仁左衛門の日本駄衛門ほかで珍しい通し上演である。

(八月一日(ほずみ) 教宏)

 4月大歌舞伎 歌舞伎座・4月26日まで


 「白浪五人男」の「白浪」は盗賊の異名で、黙阿弥は幕末の名優4代目市川小団次と提携、多くの白浪物を書いた。主人公は悪事は働いても大悪党ではなく市井の人である。


=2004年4月1日朝日新聞(東京本社版)
夕刊マリオンから

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