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2004.4.16(金)更新
 

どうして自分の子どもを捨てることができましょう
だが一方、どうしておれたちの信仰、民族に背くことができましょう

「屋根の上のヴァイオリン弾き」

 民族も信仰も違うロシア人青年と勝手に結婚した三女を、許すべきか、許さざるべきか。娘に背を向け、天を仰いで神に問いかけるテヴィエの表情は、苦渋に満ちている。

市村正親のテヴィエ(右)と夏木マリの妻ゴールデ
 20世紀初めの帝政ロシアの寒村アナテフカを舞台に、伝統と信仰に生きるユダヤ人一家の姿と、強制立ち退きの迫害を受けて世界各地へ離散していく民族の受難を描く作品だ。

 貧しい牛飼いテヴィエの願いは、5人の娘たちが親の決めた相手と幸せな結婚をすること。しかし長女も次女も三女も、それぞれ自分の好きな相手との結婚を選ぶ。

 できることなら娘の思いを優先してやりたい。しかし、自分たちの生活を支えてきた民族のしきたりを無視することはできない。

 悩んだあげく、テヴィエは三女の結婚だけはどうしても許すことができなかった。しかし一家が住み慣れた土地を離れるラストシーンで、三女が家族の元を去る時、テヴィエは長女に「達者でなって言ってやれ」とぶっきらぼうに言い放つ。不器用な父親の愛情がにじんで、涙を誘う。

 初めてテヴィエ役に挑んでいる市村正親は、「思い通りにならない人生をただ嘆くのではなく、それを受け止め、前向きに生きていこうとする。そのたくましさがテヴィエの魅力」と語る。力強い瞳が印象的な、頼もしいテヴィエだった。

(菅谷 志津)


ブロードウェー初演から今年で40周年を迎えるミュージカル。日本では67年初演以来、900回も上演を重ねた森繁久弥、その後を受け継いだ西田敏行らの名演で知られる。

=2004年4月8日朝日新聞(東京本社版)
夕刊マリオンから

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