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2004.5.14(金)更新
 

足軽であっても武士、美しく死ぬ術は心得ております。
なにとぞ、ご一党にお加え下さい。

「元禄夢一座」

桂三枝の寺坂吉右衛門(左)と堀内孝雄の堀部安兵衛
 桂三枝の寺坂吉右衛門(左)と 
 堀内孝雄の堀部安兵衛 
 朝丘雪路と桂三枝に芝居は初めての歌手堀内孝雄という異色の顔ぶれによる谷正純作・演出の“忠臣蔵外伝”である。これは討ち入りした赤穂浪士の中で一人生き残った三枝演じる寺坂吉右衛門が、伏見の茶屋で横内正の大石内蔵助に言うセリフだ。

 内蔵助は仇討(あだうち)ちなどしない、ととぼけるが、足軽の言葉に「美しく生き、美しく死ぬ武士の道」を教えられたことで、一党に加えることにする。それを伝える使者が堀内の堀部安兵衛。

 堀内は薄汚いなりの、低い声が通るいい安兵衛だ。癖なのか歌の時と同じように顔を上げ下げするのもご愛嬌(あいきょう)。

 離れて平伏している吉右衛門に「近う」と言うと、吉右衛門は安兵衛の膝(ひざ)にチョコンと乗る。三枝は目をまん丸にした得意顔を客席に向け続けている。意表を突く芝居がおかしい。

 安兵衛が仇討ちへの参加の意思を尋ねると「お断り申し上げます!」と割って入るのが、朝丘の恋川あやめ。行き倒れ寸前だった吉右衛門を助け、戯作者(げさくしゃ)として面倒をみてきた旅の一座の座長である。

 「死ぬことが美しいなんて、嬉(うれ)しいなんて……(お客に泣いて笑ってもらう)河原者として生きる方が、幸せに決まっている」と言う。

重いテーマをちりばめた芝居作りがうまい。

 あやめにはこんなセリフもある。

 「あなたがたは美しく死のうとなされていますが、生きるしかない人間たちもいるのです」

 親に売り飛ばされていく一座の芸人のことだ。

(八月一日 教宏)

   =新宿コマ劇場 5月27日まで=


=2004年5月13日朝日新聞(東京本社版)
夕刊マリオンから

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