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2004.7.2(金)更新
 

僕の言いたいのは要するに、オーケストラの中で
コントラバスはけた外れに重要な楽器だと言うことです。

 「コントラバス」

コントラバスを持つ西川浩幸=撮影・野口泰輔
コントラバスを持つ西川浩幸
=撮影・野口泰輔
 数時間後に公演を控えたコントラバス奏者が、ビールを片手に部屋に入ってくる。ブラームスをBGMに、彼はオーケストラにおいてコントラバスがいかに大切であるかを、観客を相手に熱っぽく語り始める。楽器への愛着と、音楽家としての強い自尊心を印象づける。

 この一見地味な楽器は、雪の中、コートをかけて温めてやる大事な相棒であり、称賛を浴びる指揮者をうらやましく思いつつも、「オーケストラというのは、人間社会を忠実に映す鏡だ」と序列の底辺に位置することに甘んじている彼自身でもある。

 しかしそんな彼にも、思いを寄せる華やかなソプラノ歌手がいる。しかし彼女は、地味な楽器であるが故に彼の存在すら知らない。それがいらだたしい男は、彼女のことを考え出すと怒鳴ったり泣いたり、コントラバスを「でくの坊」とののしってみたり、彼女に見立てて狂おしくキスしてみたり。ついには順風なはずの人生に疑問を抱いて、彼女を手に入れようと、首相も聞きに来る今日の演奏会の一瞬に、彼女の名前を叫ぼうと企てるのだ。

 開演時間が迫り、彼は意味深な笑みを残して部屋を出ていく。シューベルトの「鱒(ます)」が流れる中、気になるラストである。

 今年で俳優生活20年を迎えた西川浩幸の一人芝居。「舞台上と客席の時間の流れが同じなので、自分の心境や状態がそのまま現れてしまう。計画しすぎず謙虚に、観客に預ける気で演じたい」と語る。

(根岸 華奈子)

   =白寿ホール 7月4日まで=


白寿ホールはクラシック音楽専門のホール。劇中には西川がコントラバスの音を出すシーンもあり、生の弦の振動を感じることができる。

=2004年7月1日朝日新聞(東京本社版)
夕刊マリオンから

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