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「義経千本桜・川連法眼館」
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右近の狐忠信
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壮大な歴史劇を彩る主人公のひとり、佐藤忠信が初めて登場、それまで義経の命で静に仕えて旅を続けていた忠信が実は狐(きつね)で、その本性を現すおなじみの場面である。
義経が法皇より賜り、別れ際に形見として静に与えた「初音の鼓」は、内裏で雨乞(あまご)いの時、2匹の狐の生皮でこしらえたもの。それが自分の両親だったと忠信が打ち明ける。
何も知らないうちに失った親を恋い慕い、孝行が出来なかった悔しさを言い募って別れを告げる狐が涙を誘い、狐に自分の身の上を重ね合わせた義経が鼓を与えると、驚喜して鼓にジャレる姿が胸を打つ。
欄間抜けなど数々の仕掛けを使ったケレンたっぷりなこの場面の引っ込みで、猿之助が宙乗りを復活して大喝采(かっさい)されたのが36年前。以来「川連法眼(かわつらほうげん)館」は猿之助歌舞伎の十八番になった。
だが、今月の忠信は弟子の右近。猿之助が病に倒れて、34年目にして初めて主のいない「7月猿之助奮闘公演」になってしまったのだ。
代役を含めて既に何度か師匠譲りの忠信を経験している右近だが、歌舞伎座でこの大役は初めて。猿之助に代わって今月の座頭を務め、昼夜で「桜姫東文章」を出している玉三郎の「口上」を受けて、幕が開く。
親を慕う狐の忠信を熱演する右近に、師弟の恩愛が重なる。
(八月一日 教宏)
=歌舞伎座 7月28日まで=
◆ 「義経千本桜」は、「菅原伝授手習鑑」「仮名手本忠臣蔵」と共に歌舞伎、文楽の三大名作。忠信、権太、知盛の3役を演じることが歌舞伎の立ち役の卒業論文といわれる。
=2004年7月8日朝日新聞(東京本社版) 夕刊マリオンから
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