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「東海道四谷怪談」
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勘九郎のお岩と橋之助の伊右衛門
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夏の芝居といえば怪談物。ドロドロの太鼓の音で出てくる歌舞伎の幽霊は多いが、「四谷怪談」のお岩は別格で「お岩さん」とさん付けで親しまれ、かつ怖がられてきた。
この芝居は「忠臣蔵」の義士とは逆の道を歩んだ不忠者たちの人間像と共に、江戸庶民の生活や風俗を活写した鶴屋南北の傑作。
怪談だから、亡霊のお岩が提灯(ちょうちん)から抜け出したり、壁の中に消えて行く見せ場もあるが最大の見どころは「伊右衛門浪宅の場」。
お岩は、父を殺したのが夫の伊右衛門とも知らず、敵を討ってほしいばかりに復縁して耐えている。
気心の知れた勘九郎のお岩に橋之助の伊右衛門。
「常から邪険な伊右衛門殿、男の子を生んだとて、さして喜ぶ様子もなく」と赤子をあやしている姿がけなげで、哀れだ。
めまいを起こして隣の伊藤家から届いた薬を押し頂いて飲む。血の道の薬のはずが面相を変える毒薬だった。孫娘がほれた伊右衛門を婿に迎えるため、お岩を醜くして夫婦を別れさせようと仕組んだのだった。
伊右衛門の虐待、鏡でこれが自分の顔と気付いた時の悲劇、抜け落ちる髪、したたる血。凄惨(せいさん)極まりない展開の中「何、安穏におくべきや」と言うお岩に貞淑な武家女房の面影はない。哀れで、可哀想で、怖い。
(八月一日 教宏)
=歌舞伎座 8月28日まで=
◆歌舞伎座が、当時売り出し中の勘九郎や現三津五郎ら若手で8月の歌舞伎興行を復活して15年。平成5年からは昼夜2部制を3部制にして人気が続いている。
=2004年8月26日朝日新聞(東京本社版) 夕刊マリオンから
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