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「西太后」
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藤間紫の西太后
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死ぬと分かった実の子、同治帝に「皇帝とは名ばかりの、母の道具としてなど、生まれて来とうなかった」と言われた西太后が、分身の宦官(かんがん)李蓮英に言うセリフである。
西太后の藤間紫が聞かせて、見せる。せめて最期は普通の母でいたいと泣き、食い違ってしまった親子の気持ちは「もう元には戻らない」と放心する。
そして、「まだまだ、歩み続けねばならないのだから」と自分に言い聞かせて「李蓮英、供(とも)致せ!」と毅然(きぜん)と言い放つ。
母親と権力者の間でもがく人間西太后の痛烈な叫びを聞くようだ。
花道の七三まで行って再び肩を揺すって泣いた後、気を取り直して昂然(こうぜん)と引っ込んでいく。
元々、「歌舞伎の女形芸ができるただ一人の女優」といわれる紫のために企画された舞台。清国を滅ぼした女帝とされてきた西太后を、自分の運命を自ら切り開き、国を支えた人物として描いた作品だ。孫徳民作、石川耕士脚本、猿之助演出。
再演の今回は、李蓮英の笑也、同治帝の段治郎ら猿之助一門を中心とする出演者の中で、女優は紫だけ。立女形(たておやま)、藤間紫というわけだ。
権力争いをする8大臣との対決で見せる圧倒的な迫力、見物中の京劇をやめさせて、芝居を言いとがめる時の自在なセリフなど、紫の芸の大きさが随所に光る。
(八月一日 教宏)
=新橋演舞場 9月27日まで=
◆藤間紫。1923年、東京生まれ。12歳で宗家藤間勘十郎に入門、18歳で名取。戦後、映画、演劇デビューして売れっ子になる。88年、紫派藤間流を創設して家元に。
=2004年9月9日朝日新聞(東京本社版) 夕刊マリオンから
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