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「噂音菊柳澤騒動」
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くるわの趣向で綱吉(菊之助=中央)を もてなす出羽守夫婦(菊五郎=手前、時蔵=右)
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御台所(みだいどころ)の操(みさお)の前(時蔵)が一言叫んで、こともあろうに、将軍綱吉(菊之助)に切り付け、とどめを刺してしまう。ビックリする。
理由はもちろんあって、御台所は「かかることをなし奉るも、これ全く国家安穏、下万民(しもばんみん)のためなれば、お許しなされて下さりませ」と詫(わ)びる。もう大詰め。次の場で、万事休した主人公の柳澤出羽守吉保(菊五郎)が、芝居の全容を口にする。
「ムゝ、この徳川の世を掌握なさんず我が巧み、大願成就を目前に、事破れしか。無念やなァ」
実録本や講談で人気だったという「柳澤騒動」。綱吉の側用人柳澤吉保が、綱吉に酒色を勧めて寵愛(ちょうあい)を得、大老格に出世した上、妻おさんの産んだ子を御落胤(ごらくいん)として将軍の座に就けようとするが、御台所が井伊掃部頭(かもんのかみ)と謀り、綱吉を暗殺、吉保も失脚するという話だ。
裏と表の形でそれと同じ内容の話が柳橋の船問屋主人出羽屋忠五郎を軸に展開するのが、明治8(1875)年初演の黙阿弥のこの歌舞伎。
九代目団十郎が出羽守、忠五郎などの4役で大好評だったという。おなじみの将軍や大老が実名で登場するのだから、さもありなんである。
今回は、菊五郎が同じ善と悪、老若の4役を務め、約百年ぶりの復活となった。チト長いけど面白い。
(八月一日 教宏)
=国立劇場 11月26日まで=
◆「噂音菊柳澤騒動」 「かねてきくやなぎさわそうどう」と読む。菊は菊五郎をさし、原題も団十郎にちなみ「裏表(うらおもて)柳団画(やなぎのうちわえ)」だった。
=2004年11月18日朝日新聞(東京本社版) 夕刊マリオンから
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