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2004.12.9(木)更新
 

なあ、濡れ燕、
おめえも久しく血を吸ってねえよなあ

「丹下左膳」

「丹下左膳」
 中村獅童の丹下左膳
 ほろ酔い機嫌の丹下左膳が愛刀の濡(ぬ)れ燕(つばめ)を抜いて恋人にでも言うように語りかける。片目、片腕の超人剣士は人を斬(き)るのが生きがいなのだ。

 数多くの俳優によって映画や舞台、テレビで演じられてきた左膳だが、この飲んだくれの怪人を時代劇のヒーローにしたのが、無声映画時代から四半世紀近くも当たり役にした大河内伝次郎。「シェイは丹下、名はシャゼン」の声が懐かしい時代劇ファンも多いに違いない。

 最近の時代劇人気の中でよみがえったのは中村獅童の左膳。歴代の左膳が次々と映し出され、最後に叔父の錦之介が映るスクリーンを蹴破(けやぶ)って飛び出してくる。重みやすごみはまだないが、今引っ張りだこの人らしい勢いがある。既にテレビで演じていて、チャンバラには大事な刀の扱いもうまいものだ。

 おなじみ「こけ猿の壺(つぼ)」をめぐる話で、相馬藩士だった兄が理不尽な切腹を命じられたことを家老に直訴して斬(き)り合いになり、右の目と腕を失い、虚無的な人間になってしまったことも回想される。

 「いいかよく聞け、侍になりたいなんて二度と言うな」

 左膳のように強い侍になりたいから剣術を教えてくれ、と言うチョビ安を烈火のごとく怒る。過去を背負った無頼漢左膳の心の内が見えるようだ。獅童がうまい。

(八月一日 教宏)

  =新橋演舞場 12月26日まで=


原作は27年から2年間、新聞に連載された林不忘の「新版大岡政談・鈴川源十郎の巻」。映画化は28年の3社競作から。今回の監修・脚本は水谷龍二、演出は小野鉄二郎。

=2004年12月9日朝日新聞(東京本社版)
夕刊マリオンから

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