asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
神田神保町(2)「人劇通り」周辺

 神保町に限らず、古書店めぐりにはいくつかの「掟(おきて)」がある。

 古書は新刊本と違って返品のきかない「生物(なまもの)」なのだ。生鮮食料品と同様、無神経にいじくりまわされるのを極端に嫌う。
 また、古書の値付けこそは、その店主の経験・見識の集約されたものであるから、「高いなあ」などと口に出して言うのはご法度なのである。高ければ買わなければいい。
 また、3冊500円といった均一本の支払いに1万円札、これもよろしくない。小銭を用意すべし。

しゃれたウインドー。本棚に飾っておきたい初版本が並ぶ。竹久夢二の小品の版画が人目を引いていた
(写真・横田正大)
 さて、最低限の掟を守りつつ、神保町のニューウエーブ「人劇通り」に分け入ってゆこう。

 靖国通り、三省堂書店書泉グランデとは反対側に人生劇場という古くからのパチンコ屋がある。
 だから、そのパチンコ屋の周辺の横丁を、誰が呼びだしたか「人劇通り」。

 神保町のメーンロードを流して歩いている「初級」の人々は、まず、この横丁までたどりつけない。

 しかし、この横丁をしばらく進むと、ちょっとした資料館といった趣の書肆(しょし)埋れ木のウインドーの前にくる。
 明治、大正、昭和の本がほとんどパラフィンをかけられて展示、いや売られている。古書店街を歩く掟を否応(いやおう)なく思い起こさせてくれる格調高い店である。

 埋れ木の先の道を左に曲がれば古典芸能のみはる書房(2階)や、「美は雑然にあり」と思わせる店内の書肆ひぐらしがある。
 その狭さ、混沌(こんとん)ぶりに目を奪われて、斜め向かいの美術倶楽部ひぐらしを見過ごしてはならない。
 こちらはうって変わった高級サロン的な店舗と幻想文学、芸術を中心とした高踏派的品揃(しなぞろ)え。
 金子国義の作品集や明治の鏡花本に見入っていると、時間は止まり、場所の感覚が失われて……まさに迷子の感覚にトリップする。

→ 神田神保町(3)レトロ喫茶探訪 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年9月11日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion-hp@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion-ppr@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2004 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.