asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
根岸(2) 柳通り

 根岸の町は、他所(よそ)からの散歩や物見遊山の人たちのための町づくり、といった気配がほとんどない。

 この町に住む人と、ここに何らかのご縁のある人が出入りする、ひっそりとした町である。

     
カメラを向ける人も多い、古い理髪店。店名の上に掲げられた「整容浄髪」の看板もシブイ
(写真・横田正大)

 迷路のような道も、かつての田舎の道が区割り整理もされないまま今日に至ったため、という。
 震災、戦災にまぬがれたために明治・大正からの路地や町並みが残った。逆に言えば、「現代」に取り残されたともいえる。

 しかし、この町は、高層ビルやマンションではない、人のスケールによって成り立っていた町を、実感的に思い出させてくれる。

 言問通りから金杉通りに入り古い商家をながめながら少しゆくと、道の右側奥に鳥居が見える。
 ここが富士講で知られる小野照崎神社。6月末日と7月1日のお山開きには、富士塚登山と茅(ち)の輪くぐりでにぎわう。なんとも好ましい祭事である。

 さらに金杉通りを進むと、日興信用金庫があり、その先の道を左折する。
 柳の並木が密になるこの通りが柳通りであり、かつて花街のあった界隈(かいわい)。

 この道は、東京の食通にとっては無縁ではない。洋食の香味屋があるからだ。
 散歩中、にわか雨に遭いこの香味屋に飛び込み、ホワイトアスパラを肴(さかな)に白ワイン飲みつつ、雨をやりすごしたこともある。優雅なティー(?)タイムとなった。

 香味屋の先は、心なしか町の雰囲気が、しっとりとしてくる。

 道の右側はかつての花街の中心、今でも細い路地に入れば、深夜まで営業している隠れ家的な洋食居酒屋や料亭が点在する。

 柳通り、さらにその先左には、映画のセットのような本藤理髪店がある。
 セットどころか、この明治末創業、大正14年改築の店舗は、なん度か映画のロケに使われたというが−−ずっと休業中のよう。

→ 根岸(3) 笹乃雪〜子規庵 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年11月27日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion-hp@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion-ppr@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2004 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.