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谷中(10) 三浦坂〜根津

 谷中一丁目、妙行寺向かいの大きなヒマラヤ杉の下を通って、延寿寺の前に出る。寺沿いに左に折れると右に曲がる道に出合う。この道の左に大名時計博物館がある。

 勝山藩の下屋敷跡というが、人の庭にお邪魔するような気分で博物館の入り口に至る。
 大名時計のコレクションは陶芸家の故上口愚朗によるもの。ひっそりとした展示が秘密めいていておもしろい。

道路にもあふれる、おびただしい猫グッズ。店の飼い猫も現在6匹居るという
(写真・横田正大)

 館を出て、元の道に戻って先を行けば三浦坂。

 この坂、猫のグッズのねんねこ家ですっかり有名になってしまった。
 坂の途中の茶店を思わせる店構えも楽しいが、ここの白玉セットがユニーク。あずきの中に白玉が入っているのだが、その白玉が猫の肉球の形、という趣向。
 まあ、愛猫家にとっては立ち去りがたいスポットではないだろうか。

 三浦坂を下り右に折れる道を行くと、あかじ坂にぶつかる。
 この角に澤の屋旅館がある。外国人旅行者の間で有名な旅館である。

 道はあかじ坂から藍染大通り睦会と看板の出ている商店街へと至る。ここから地番は文京区根津となる。

 その入り口左先には染め物丁子屋の、いかにも老舗らしい店舗が見え、右は、これもなつかしい貸本屋のなかよし文庫
 ただこの店、今は休業中で、古書店としてリニューアルするという張り紙がされている。

 道をそのまま真っすぐに進むと左側に甘党御用達の芋甚がある。
 大正時代からの甘味処で小倉とバニラのアイス最中が人気で夏場は行列ができる。根津の名物店の一つである。

 この芋甚の左を曲がれば細い根津の横丁散歩が始まる。昔ながらの花屋、居酒屋、製麺店(せいめんてん)、古いアパート、銭湯――絵に描いたような昔のままの横丁商店街を歩くことができる。

 ◆ねんねこ家は(土)(日)(祝)のみの営業です。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2003年2月26日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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