asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
根津(3) 弥生坂を上る

 言問通りを谷中から根津駅に向かって左、天眼寺となりに谷中下町ゆべしの店、天三味がある。
 ここのゆべしももちろんいいが、季節柄、塩味がしっかり利いている草餅がいい。
 ちょっと行儀は悪いのだが、お土産とは別に1個は手にして、弥生のこの時期、草餅を食べながら弥生坂を、ふらりふらりと上ってゆく。

 季節といい、土地の名といい、まさに春、弥生の散歩である。のんびりと行こう。

竹久夢二美術館の掛け軸や挿絵の原画など。「夢二ワールド」にどっぷり浸れる
(写真・横田正大)

 しばらく行くと信号のすぐ脇に弥生式土器発掘ゆかりの地という碑が立っている。

 古町といったって、これほど古い町(?)はめったにない、なにせ弥生式土器のころだからなあ、などと妙な感心のし方をしながらも先に進む。
 ここで人が土器を使っていたころは、振り返って坂の下方を眺めれば、きっと海が見えたにちがいない。

 町中の、路地や横丁ももちろん大好きだが、たまにはスケールを変えて町を見るのもおもしろい。坂や台地は、人に古代への想像力をかきたててくれる。

 さて、信号二つ目を左折する。暗闇坂と名付けられた坂道である。
 その先、東京大学工学部裏、弥生門のはす向かいに立原道造記念館・弥生美術館・竹久夢二美術館がある。

 この連立する3館は小ぶりながら東京、いや日本中でも、もっとも有意義で好ましい美術・記念館の一つではないだろうか。
 企画展にせよ常設展にせよ、ここほどリピーターが多い美術館は、そうはないと思う。
 収蔵品は、立原道造のパステル画、高畠華宵、蕗谷虹児、そして竹久夢二といった、いわゆる大正、昭和の叙情画が充実していてファンを喜ばせている。

 華宵や夢二、虹児の絵に見入っていると、大正、昭和初期の人々の童心や憧(あこが)れ、また恋心が伝わってくる。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2003年3月19日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion-hp@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion-ppr@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2004 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.