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本郷(4) 古書店と横丁

 万定から本郷通りに戻ってもう少し古書店散歩をしてみよう。

 社史、財界史に強い泰雲堂書店。そしてその先、いかにも時代物の店舗の棚澤書店。この建物、明治中期の商店建築として登録有形文化財に指定されている。

 この欄でもすでにふれたが古い建物を見るときは上を見上げよう。1階を見ているだけでは気がつかない建物の“素顔”と歴史を認めることができる。

東大正門近くの古書店。明治中期の近代的商家建築。2階の手すりに趣があるという 
(写真・横田正大)

 棚澤書店の先には山岳書、限定本の森井書店、また法律関係と専門雑誌を扱う伸松堂書店、政治・経済の宗文館書店、医学、科学史の書肆文献堂などと続く。そして画集、美術書の柏林社書店の先は言問通りとなる。

 東大前の古書店、硬めの学術書や専門書が多く、また店頭売りよりは目録やインターネット販売に力を入れている店も多いが、それでも(おや、この全集がこんなに安く)と思ったり、店頭の均一台で掘り出し物を見つけることがある。

 それにしても、古書店で学生とおぼしき姿をあまり見かけない。昨今の東大生は古書とは無縁なのか、と思ったとき、ふと、落第横丁をのぞいてみよう、という気になった。郁文堂の手前を左折、そうペリカン書房の店舗のある通りだ。

 この横丁、かつて学生でにぎわった“栄華”の跡をとどめる一方、新しい波も生まれてきている。本郷では珍しい和風のカフェ・Neo Sitting Room!(ネオ・シッティング・ルーム!)やカウンターバー・グリーンアップルがそれ。

 そういえば、ここ落第横丁に対して、万定のある通りは合格横丁という。五月祭のときには横断幕などが出てちょっとした縁日の趣がある。

 「落第」でも「合格」でもよい、この本郷の東大前、せっかくの古書店街があり、またかつての先輩たちの青春の横丁が残る街。
 もっと学生街独特のエネルギーを感じさせてくれてもいい気がするのだが。

→ 本郷(5) 東大の内外 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年6月11日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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