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深川(2) 森下の老舗

 深川・芭蕉庵跡の散歩を楽しんだ我が同行者たちは、ただ俳聖をしのぶだけでは満足しない。
 酒聖、食聖へ至る道案内も強いられる。まかせてもらいたい。ここ森下には、名だたる老舗の、そば屋、居酒屋、“けとばし屋(馬肉屋)”などが集中する。

会社帰りにちょっと一杯。サラリーマン憩いの場所。ほろ酔いに夜風が気持ちいい 
(写真・横田正大)

 場所は、都営新宿線・大江戸線森下駅を出てすぐ、新大橋通りと清澄通りの森下駅前交差点の一角。そばの京金、大衆酒場と自ら銘打つ山利喜、そして馬刺しとさくら鍋のみの家

 京金は、そば良し、酒よしの店。そばは、そばの実を石臼でひき、手打ち。そばの香りも大切にする。基本のせいろの他に田舎そばや季節ごとの「変わりそば」も楽しめる。
 酒は澤の井、飛露喜、浦霞他の銘酒がそろう。そば屋での酒は、客の少ない頃合いを見はからって、が常識だが、まずは焼きみそで一杯となると、つい腰が落ちついてしまう。

 京金から交差点の角を曲がると山利喜がある。この店、驚くことには開店の5時前に人が並んでいる。
 (よく出るパチンコ屋じゃあるまいし)などと思いつつ、自分も列の中で、のれんが掛けられて店が開くのを待ったりしている。
 ビール、日本酒、焼酎の他にワインもある。ここの煮込みがまたワインにもよく合う。その他、やきとん、刺し身、揚げ物など酒の肴(さかな)の種類も豊富で料理に心がこもっている。
 土地の常連のオジサンの店であると同時に、電車に乗ってでも、というビジター女性客の支持を受けているという稀有(けう)な店。

 そしてその並びに、馬肉のみの家。東京の下町で馬肉といえば日本堤の中江と、この、みの家が、思い出されるのではないか。
 人によっては牛肉よりも馬肉の方が味も歯ごたえも上という。
 ここには芭蕉の姿をしのぶ像が建てられ、清洲橋を望む隅田川をバックに絶好の記念写真スポットといえる。
 店構えといい、入れ込みの座敷といい下町の老舗の風格をただよわせる。大人の雰囲気の店である。

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年7月2日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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