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深川(6) 辰巳新道へ

 門前仲町の古町とその周辺の居酒屋をのぞいてみよう。清澄庭園から清澄通りに戻り、仙台堀川にかかる海辺橋を渡る。
 渡ってすぐ右手、庵(いおり)の前、旅立ち姿の芭蕉像が目にとまる。石柱の表示を読むと芭蕉の弟子、鯉屋杉風の採荼庵(さいとあん)跡とのこと。

 また、仙台堀川に沿って「水辺の散歩道」には奥の細道の句18句の掲示が立っている。奥の細道への出立は、この採荼庵から、にちなむもの。

 清澄通りをさらに南下すると道路脇に「小津安二郎誕生の地」の標示に出くわす。地番を見ると深川1・8・8。(あのダンディーな小津監督はここ深川で生まれたんだ……。小さな記念館でも建てばいいのに……)などと思いにふけっているうちに進行方向左側に赤札堂が見えてくる。

 この赤札堂の先の路地の一角が、まさに知る人ぞ知る辰巳新道の飲食街。

夕暮れ迫るころ、三三五五どこからともなく集まるおとうさんたち。戦後風景そのままの飲み屋街 
(写真・横田正大)

 勝手知ったる常連か、地元の人の案内でなければまず入るのに勇気がいる。戦後焼け跡的赤ちょうちんの、“濃い”雰囲気の店がギュッと30軒ほど集まっている。
 こういうエリアに侵入しようと思ったら、まず、夕方の明るいうち、それぞれの店が開店の準備をする頃、ひと通り歩いて様子をうかがっておく。

 また、店の広さが10人も入ればいっぱいという感じの店も多いので、多くても2、3人までの人数でのれんをくぐるべきだろう。そして長居は禁物。常連の客の邪魔をしてはいけない。

 辰巳新道の入り口すぐ近くには「仲町名物・牛にこみ」の大坂屋がある。この店は実にシンプル。こざっぱりした店のカウンター内に煮込みの鍋がドーンとあるだけ。

 ここ大坂屋は「煮込み系」の人たちにはよく知られた店なので、他の町からもやってくるようだが、待たずにすんなり入れればラッキーというべきか。

→ 深川(7) 深川不動周辺 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年7月30日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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