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日本橋(1) 丸善周辺

 歩いて、初めてわかる地理関係ということがある。
 日本橋の丸善日本橋高島屋へは地下鉄・日本橋駅で降りて、ということになるのだが、JR東京駅の八重洲口からでも歩いて5分から10分程度で行ける。

 今日の東京駅の、丸の内側と八重洲側のギャップがなかなか興味ぶかい。
 丸の内側は、ご存じのように丸ビルもリニューアルされ、ブランドショップが軒を連ねる。
 一方、八重洲側は再開発が遅れ、今もアジア的路地・横丁が残っていて、町の色もにおいもぐんと濃い。

 この八重洲側の町を歩きたくて、東京駅から日本橋を歩くことがある。

 どうやら、この八重洲側、さらに日本橋まで再開発の計画が起きているようだ。今の町があるうちに歩いておかなければ、ここもまた、ツルツル・ピカピカのビルと、整然とした植栽の、どこにでもある“美しい街並み”になりかねない。

 八重洲側の、戦後の気配さえ残る飲食街を横目で見ながら中央通りを目指せば、すぐに高島屋や丸善となる。

 高島屋は昭和8年建設という建物の風格もあってか、よき“上流”を感じさせてくれるデパートである。

 こういう建物に入ったらエレベーターや階段や屋上周辺は要チェック。建設当時の優美なデザインに出合えるからだ。

丸善の創業者早矢仕さんが命名したハヤシライス。隠し味のスパイスが常連を引きつける 
(写真・横田正大)

 高島屋の向かいが丸善

 丸善は明治初頭から、洋書を輸入、販売してきた歴史がある。尾崎紅葉や田山花袋も通った書店である。

 この地下の、文具・雑貨のコーナーで、老いた映画監督と夫人である老女優が買い物をしている姿を見かけたことがある。それこそ、映画の一シーンのような、静かな雰囲気だった。これも丸善の地階という舞台だったためだろうか。

 ところで丸善の、ひっそりとした屋上が、ちょっとした穴場だ。ハヤシライス発祥の地のハヤシライスが食べられるのだ。

→ 日本橋(2) 橋詰め周辺 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年9月24日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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