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日本橋(4) 元魚河岸周辺

 東京で魚河岸といえば築地にきまっている。しかしこれは関東大震災以後のこと。
 それ以前は、ここ日本橋の北側、日本橋川に沿って魚河岸があった。日本橋北詰めには「日本橋魚河岸跡」の碑が立つ。
 中央通り、三越の向かい側、日本橋室町本町周辺を歩くと、なるほど、ここがかつての魚河岸であった名残を存分に感じることができる。

 海の香りがするのだ。
 いや、実際の海風の香りがするというのではなくて、そこここに海産物関連の店を認めることができる。鰹節(かつおぶし)屋、佃煮(つくだに)屋、海苔(のり)店、あるいは魚の身を使った練りものの店。
 錦絵や明治石版画名所絵を見ると、日本橋を描いたものには必ずといっていいほど天秤棒(てんびんぼう)をかついだ魚屋の姿が描かれている。

 三井本館の向かい、中央通りを渡った先、左側にある鰹節のにんべんも元禄の創業という。
 鰹節は料理の他に、祝い事の贈り物としても使われるが、よい鰹節の見分け方などを店の人に聞きながらの買い物も楽しい。
 このにんべんの地下の贈答客用の部屋には鰹節関連の歴史資料の展示もある。

神茂の分厚いはんぺんはわさびじょうゆで食べるのがお勧め 
(写真・横田正大)

 練りものの神茂(かんも)ははんぺんとかまぼこで有名。暑い頃ははんぺんを買うと、これが気になって散歩を途中で切り上げて帰りたくなる。
 おでん種も豊富なのでこれからの季節には一層立ち寄りたい店だろう。

 佃煮は佃島が発祥というが、ここ日本橋も元魚河岸、江戸時代からの佃煮屋がある。日本橋鮒佐(ふなさ)もその一つ。じゃこやアサリの佃煮は人気の定番商品だが、今なら、ハゼといった旬の素材の佃煮もある。

 日本橋室町、本町周辺は中央通りを境にして、三越、三井側と、その向かい側とは町の姿に極端な差を見せつける。
 一方は壮麗な西洋建築の町、そしてこちらはまさに下町の風情。

 

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年10月15日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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