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日本橋(5) 紙と木の老舗

 日本橋の江戸の名残は佃煮(つくだに)や鰹節(かつおぶし)などの海産物を商う老舗にあるだけではない。紙と木の手技の妙を味わえる町でもある。

 日本橋1丁目、元東急百貨店(現在ビル建設中)の裏手、洋食のたいめいけん、知り合いにこの店のラーメンのファンがいる。猫舌の彼は、コールスロー(50円!)も注文して、ラーメンにコールスローを乗せて温度調節して食べる。
 いや、日本橋の紙と木の話だった。このたいめいけんの5階に(たこ)の博物館がある。たいめいけんのオーナーは凧のコレクターとして知られる。
 江戸錦絵凧から世界のカイトまで、まさに紙と木竹による遊びのデザインを味わうことができる。

 寝具の西川、中央通り向かいには現在11代目という漆器の老舗、黒江屋がある。輪島や飛騨などからの厳選された漆器を求めることができる。
 ここでは祝事用など、家紋入れも注文できる。

紙とは思えない絢爛(けんらん)豪華な和紙がそろう榛原。センスのいい封筒や便箋を選ぶのも楽しい 
(写真・横田正大)

 紙の華やぎと和らぎも忘れてはいけない。日本橋交差点から永代通りを茅場町方面へ向かって右、手すき和紙の榛原(はいばら)がある。
 店内は、まさに紙の饗宴(きょうえん)、江戸以来の紙のデザインが楽しめる。
 とくに人気の千代紙は、一枚一枚めくって品選びしているうちに、なにか歌舞伎の舞台でも見ているかのような粋でめでたい気分に染まってくる。
 便箋(びんせん)、のし袋、ポチ袋、また紙の工芸品の品ぞろえも豊富で、贈答品としても楽しい。

 さて、もう一軒。江戸橋を渡って日本橋小網町。日本でも数少ない楊枝(ようじ)を専門に商うさるやがある。こちらも創業は江戸時代、宝永元年(1704年)という。
 朱で「大入」と刷られた桐箱や、年末に売られる翌年の干支(えと)が描かれた箱入りの楊枝などは、縁起物としても人気がある。
 この時代、楊枝だけを扱う店があるというのがうれしいではないか。

 

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年10月22日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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