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千束周辺(3) 浅草4〜5丁目

 千束通りは、言問通りから入って、つまり浅草3丁目から、4、5丁目、土手通りに至るまで、なかなか歩きでがある。

 距離にすれば7、8百メートルほどの商店街なのだが、通りの左右の商店や喫茶店、あるいは食べ物屋などに気を取られながら歩くと、たっぷりと時間がかかる。
 もっとも、散歩は本来、急ぐ旅でもなければ、効率よく目的地に着けばよいというものでもないだろう。
 いや、寄り道や迷い道こそ散歩の神髄、と思っているところもある。
 と、すれば、ふと迷い込んだ横丁の銭湯で一休みしてから、また散歩を楽しむというのも散歩の極意の一つかもしれない。

 千束通りを横断して走る象潟通り、泡盛の乙姫の角を右に曲がって2ブロックの向かいに銭湯の曙湯がある。いかにも昔の銭湯の風格ある店構え。
 私は、浅草散歩の途中、この曙湯によく立ち寄る。湯上がりのビールやつまみの味は格別だからだ。

 さて千束通り、3丁目に戻ってすぐ左手、ロッキーという名の喫茶店がある。営業時間が朝6時半から夜12時、というのがすごい。日曜日もやっている。一度、早朝にこの店に、と思いつつもまだ実現できないでいる。

 再び戻って、象潟通りを越えて広い道が小松橋通り。その先は浅草5丁目。千束通りの最深部といってよいだろう。

 道沿い左側にギョーザで知られる中華料理の末っ子がある。この店も深夜の1時近くまで営業している。
 「浅草は夜が早くて」などと言う人は、浅草という街の懐の深さを知らない。

横丁に入ると、戦後すぐの面影を残す店がある。おこぼれのエサをハトがつついていた 
(写真・横田正大)

 この末っ子の脇の路地をふとのぞくと、その奥になんともうれしくなるような光景が目に入る。大きく「高畑鳥獣店」と書かれた看板である。
 この看板に引き込まれるように店に近づくと、ピイピイ、ピヨピヨと鳥のさえずる声が聞こえてくる。

 

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年11月12日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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