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浅草寺周辺(4) 伝法院通り

 仲見世から観音堂に向かう宝蔵門の手前、左に走る横丁がおもしろい。
 極彩色の着物、骨董(こっとう)、あるいは、これぞ浅草ファッション(?)と呼びたいような、一種独特のデザインのジャケットなどを売る小さな店が立ち並ぶ通り。伝法院通りである。

 昨今、昭和ブームとやらで昭和初期から、戦後の闇市の雰囲気までもがちょっとしたトレンドになっているらしいが、ここ、伝法院通りは「本物の」昭和三、四十年代の臨場感がただよう。また、かつての興行の町、浅草の、猥雑(わいざつ)な雰囲気も存分に残る。
芝居の小道具や衣装が並ぶ店先。カツラのひもが奇妙な顔に見え、近寄りがたい雰囲気 
(写真・横田正大)

 先日も「お宮、貫一」の「金色夜叉」の貫一が着ていたマントが必要になり、通りの舞台衣装屋をのぞいたら、やっぱりあった。

 この伝法院通りに古書店があるのもありがたい。地球堂書店は店の前にスナック菓子などを売っている珍しい古本屋さんだが、場所柄だろう、江戸・東京関連の古書が充実している。
地球堂書店の右斜め向かいにある鎮護堂には、幇間(ほうかん)・たいこもちをまつる塚がある。これまた、花柳界と芸能の町、浅草にふさわしい。

 そうそう、伝法院通りを歩くと、香ばしいてんぷらの香りがただよってくる。下町・食べ歩き派御用達の店、大黒家である。
 ここの天丼のたれの、かなり濃い色と味。「なるほどこれが下町の味かあ」と感嘆しつつ、私は、天丼をビールのつまみにする。

 伝法院通りを道なりに右に曲がると公園本通り商店街となる。このあたりからJRAウインズ浅草、つまり場外馬券場に至る道は「ホッピーロード」と呼びたいくらい、ホッピーを置いてある店が多い。つまみのメーンはもちろん、もつの煮込み。

 公園本通り商店街の先、右手は、五重塔通り、さらに西参道商店街となるが、いまや他ではまず見られない「純」場末感がなんともたまらなくいい。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年1月7日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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