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銀座(1) 8丁目から

 今回から、いよいよ銀座である。銀座といえば1丁目から8丁目まで、たとえばバー、レストランガイドだけでも1冊の本に収まりきらない。
 さらに、ここ数年、世界のブランドショップが競うように銀座に出店してきている。銀座は、名実共に「世界の目抜き通り」となりつつある。

 しかし、というか、だからこそ、この欄では昨今のトレンドとは関係なく、ずっと銀座で商いを続けてきた老舗や、いまだに「戦後」の気配の残る路地、横丁や、通りから通りに至る細い抜け道を歩いてみたいと思う。
 「戦後」の気配を味わうために、銀座を8丁目からたどってみよう。

 新橋から銀座・中央通りに出て、銀座博品館の角を左折する。すぐに右に入る通りがあり、「銀座金春(こんぱる)通り入口」と書かれた表示が目に入る。
銀座で働く人たちが常連としてやってくる金春湯。缶コーヒー片手に休憩する店員さんも 
(写真・横田正大)

銭湯好きの私にとって金春通りは「金春湯のある通り」である。金春湯の営業は午後2時からと比較的早い。しかし、2時前なのにすでに人が並んでいる。
 こういう光景を見ると、「ああ、銀座は下町なんだなあ」と改めて感じる。まだ散歩しはじめたばかりなので、鯉(こい)のタイル絵を頭に浮かべつつも銭湯に入るのはもう少し後にする。

 先ほどの「入口」から金春通りに入ってすぐ、左側に「煉瓦(れんが)遺構の碑」が目に入る。明治5年から始まったれんが造りの街・銀座の遺構が発掘されたのにちなんでの碑という。

 その先、1分も歩かぬうち、左側に居酒屋、樽平の看板が見える。この細い迷路じみた抜け道がいい。
 頭上には黒い蛇がからむように何本もの電線が走り、排気扇や配管が、表通りの銀座とはまったく時代の異なる顔を現す。
 文章上の比喩(ひゆ)ではなく、この抜け道、昼なお暗き、けもの道の魅力がある。抜け道から明るい通りに出ると、一瞬、目がくらむ。

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年1月14日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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