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東銀座(1) 歌舞伎座へ

 銀座4丁目の交差点から歌舞伎座まで、距離にしてせいぜい300メートル。歩いて7〜8分ほどのところ。
 流行の先端、銀座の中心から、江戸・明治の面影残す歌舞伎座という、空間の気配のギャップのためか、実際の距離より遠く感じるのは私だけだろうか。

 もっとも、私の場合、歌舞伎座に至る前に、二、三カ所寄り道をしてしまうためでもあるが。

 日産ギャラリーから晴海通りを築地方面に向かって歩いてゆく。200メートルも歩くと三原橋に出る。この地下街も居酒屋あり、映画館ありの“戦後が残る”一角なのだが、歌舞伎座をめざすときは、ここは素通りする。

「江戸時代の呉服屋はこんなふう」と思わせる大野屋。若い女性がてきぱきと働いていた 
(写真・横田正大)

 昭和通りに出る手前角にいかにも昔の商家風のたたずまいの店がある。外人さんがウインドー越しに店内をのぞき込んだりしているが、「大丈夫、どうぞお店に入ったら」と声をかけたくなる。

 足袋・手ぬぐいの大野屋。江戸前の手ぬぐい、人へのプレゼントにも最適である。大野屋でちょいと買い物した後は、信号を渡って、昭和通りぞいに京橋方向へ行く。

 すぐにカレーの有名店、ナイルレストランの前に来るが、歌舞伎気分の日には、この店にも寄らず、めざすのは、そのすぐ先の古書の奥村書店(4丁目店)。
 この古書店、並の古本屋さんではない。歌舞伎、演劇関係の資料の宝庫なのである。私は、奥村書店の書棚をながめたいばっかりに東銀座に来ることがある。

 さらにその先の角を左折すると、足袋のむさしやがあるが、あまりウロウロするとだんだん歌舞伎座が遠くなる。
 というのも、私はふと時間が空いたときに、とくに疲れ気味のときなど、フラリと歌舞伎座の4階、一幕見のチケットを買って、舞台を半分、夢うつつで楽しもうという魂胆なのである。

→ 東銀座(2) 歌舞伎座裏 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年2月18日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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