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東銀座(2) 歌舞伎座裏

 歌舞伎座の前へ行くと、開演を待つ人の群れに会う。それはそれで、にぎやかでめでたく、心躍る光景ではあるが、私は人と待ち合わせる場合は少し先の文明堂を指定することが多い。
 お茶を飲みつつ人を待ち、ついでに昭和30年からというロングセラーのバームクーヘンを四、五カットお土産に買ったりして。

 さて、歌舞伎座と、この文明堂の間の通り、木挽(こびき)町通り周辺がなかなかいい。歌舞伎座へ行く人の、どれだけが、この通りを知っているだろうか。“穴場”的な通りと言ってもいいのではないだろうか。

 正倉院裂(ぎれ)、名物裂を扱う龍伝の庵、鱈(たら)の粕(かす)漬や鯵(あじ)の干物のつきじ近富(きんとみ)、あるいは昔ながらのまっとうな居酒屋の雰囲気の中ぜん、といった“伝統系”の店が並ぶかと思うと、オール500円バーで名を馳(は)せたネルソンズバーが、ここ歌舞伎座横にも進出してきていて、ありがたい。
 その先には、もう25年も前になるのか、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが、たまたま立ち寄ったことで知られる喫茶店、樹の花

 
「おさき」はランチタイムにも一手間掛けた料理が出る。プロの味がOLに人気だ  
(写真・横田正大)

 ところが、この木挽町通りから1本入った路地、歌舞伎座のすぐ裏手の細道がまたいい。木挽町通りを左折、すぐ右手にシチューのエルベパリジャングリル酒処・かたり亭といった店が並び、さらに左手に割烹(かっぽう)、三味線屋、お好み焼き屋といった、いかにも下町ならではの店がならぶ。

 なかでも、お好み焼きの葉名菱と割烹のおさきは常連度の極めて高い店のようである。
 と、いうことはフリの客にドッと押しかけられてもお店の方も困る、ということだろう。おさきの味を楽しみたいのなら、まずはランチの時間をねらうのが得策か。

 おさきでは、ときに、歌舞伎座の演目によってはドーンドーンと太鼓の音が聞こえたりして観劇気分も味わえる。歌舞伎座の真裏ならではのことである。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年2月25日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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