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佃島(1) 佃小橋へ

 佃島へは、いまだに「渡る」という気持ちになるのは、佃の渡しでここへ来た記憶があるからだろうか。
 今は、佃島へ来るのは実に便利になった。地下鉄有楽町線、大江戸線の月島駅から歩いてすぐに佃島のエリアに入れるからだ。

 月島駅の6番出口に出て隅田川方向、佃大橋の方へ歩いて行く。佃堀が見えたら堀に沿って右折する。
 堀を見下ろすと、鴨(かも)が20羽もいるだろうか、水面をゆっくりすべっている。堀の周辺の植え込みには、沈丁花(じんちょうげ)や木瓜(ぼけ)の花が咲いている。春の午後の日差しの中、堀の小波を見つめているお年寄りもいるし、幼児を遊ばせている若いお母さんがたもいる。

 少し先を行くと、正面にお稲荷(いなり)さんがある。水辺ならではの、波除稲荷神社。石柱の玉垣を見ると、魚河岸や佃住民からの寄進であることがわかる。町中のお稲荷さんの玉垣は、その土地の名にしおう老舗あり料亭ありで、チェックすると楽しい。

 さて、このお稲荷さんの向かいを見ると佃天台地蔵尊「入口」の表示が。といっても、その路地、人一人がやっと通れる幅で、「はたして、こんな所によそ者が入っていっていいのかしら」と、遠慮がちな気持ちにさせられる。
 なるべく足音がせぬよう静かに路地に入って行くと右手奥に、これはまた立派な地蔵尊が。また、驚かされるのが地蔵尊手前にドーンと立つ太い木の幹。屋根を貫くイチョウの木。

わずかに残る葦(あし)の間から佃小橋と小舟が見えた。周囲は高層マンション建設ラッシュだ 
(写真・横田正大)

   この路地を抜けて左に出て、さらに左に曲がると、赤い欄干の橋が見える。佃小橋である。その下の堀が、さっきの佃堀。
 佃小橋に立つと、橋の右下に「大幟(のぼり)の柱・抱(だき)が埋設」という看板が立っている。佃祭りの時の大幟の柱が、佃小橋の下に埋められているというわけだ。

 佃堀には佃折本といった船宿もあるが、ぐるりと周囲をながめれば、高層ビルが林立する。

→ 佃島(2) 住吉神社へ へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年3月17日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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