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佃島(3) 佃煮の老舗

 住吉神社の青銅の一之鳥居から隅田川を右手にみれば、すぐに佃煮の丸久の前に出る。横には劇作家・北條秀司の「雪降れば佃は古き江戸の島」の句碑が立つ。
 その向かいに星時計という喫茶店風のカフェバーがある。2階の席からは隅田川が目の前に見える。

 そのすぐ先に、佃島渡船跡の碑が立つ。以前、佃の渡しで佃島に近づくと、隅田川から佃煮屋の瓦の屋根など、佃島の古い家並みが見えたものである。
 もっとも今日でも、水上バスなどで佃島の前を通れば、古い建物のままの佃煮の天安の瓦屋根が見える。

   
佃煮御三家。お店によって「味が微妙に違う」と、ひいきの店があるという 
(写真・横田正大)

 佃島の佃煮は、先の丸久、そしてこの天安、すぐ右隣の佃源・田中屋の3店でよく知られている。
 その前を、自転車で行く二人のおじさんの「佃煮のいいにおいがするねえ」という会話が耳に入った。たしかに、醤油(しょうゆ)と味醂(みりん)(?)の芳しい香りが店の前の通りまでただよってくる。

 佃煮屋の前を過ぎ左折すると佃堀に出る。以前はアシが茂り、小舟がなん艘(そう)も舫(もや)う掘割だったが、現在は岸辺はきれいなテラスとなっている。

 佃島散歩、佃堀脇の波除稲荷神社から佃小橋を渡って左にぐるりとまわれば、またこの佃堀に戻ってくる。このコースは、いわば正規ルート。

 もちろんこのルートが佃島の本命であるが、もう1エリア。それこそ雨後のタケノコのようにニョキニョキと高層ビルが建つこの周辺で、よくぞ耐えて(?)残った、という道筋がある。それが佃仲通り
 昔ながらの理髪店、畳屋、酒屋さん、あるいは居酒屋。こういう町の一角の前に立ち、そして周囲の高層ビルや建設予定のためのフェンスなどをぐるりと見渡すと、わけもなく「負けるな下町」と判官びいきに近い気持ちが生まれてくる。

 さて、この佃島界隈(かいわい)、3年後、5年後どうなるか。細い路地や小さな商店、どうか生きのびてほしい。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年3月31日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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