asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
柴又周辺(3) 矢切の渡しへ

 春になると柴又に来たくなるのは、なんといっても、春の土手をながめたいからだ。冬の間、草が枯れて茶色の土手が、春とともに若草色になってゆく。
 コンクリートで護岸をしてしまった川辺ではだめだ。しかし、この江戸川は土手や岸辺が「生きて」いる。

 帝釈天をお参りしたら、その裏手の山本亭で一休みする。大正末から昭和初期に建てられた私邸が今日、葛飾区の施設として一般公開されている。
 ここの居間で書院庭園をながめながら抹茶やコーヒーを飲むこともできる。
 山本亭内をぐるりとまわると旧玄関に出る。玄関の向かいの柴又公園の丘の上に、葛飾柴又寅さん記念館がある。

今も船頭さんがのんびりと櫓(ろ)をこぐ渡し船。後方は柴又側で船を待つ人たち 
(写真・横田正大)

 丘の上に立って江戸川の河川敷と江戸川、そして対岸の矢切側の土手や森をながめる。広々とした春の川辺の風景は気持ちまでも広々とさせる。
 風景にひと満足したら寅さん記念館に入る。寅さんファンにはたまらない世界だろう。とくに、昭和30年代の帝釈天参道の街並みのミニチュア版は、妙なトリップ感が味わえて楽しい。

 記念館を出たら、江戸川べりへ降りて行こうか。いや、もう1カ所、江戸川を望めるポイントがあった。
 帝釈天の裏、江戸川べりに立つ川魚料理の老舗、川甚。ここの入れ込みの座敷から江戸川が望める。
 入れ込みといっても、広い座敷に、ゆったりと席を取ってくれるので、ぜいたくな気分で食事ができる。ここで鰻(うなぎ)か鯉(こい)のあらいをつまみに、明るいうちから日本酒などを飲んだりすると、本当に旅行をしている心持ちになってくる。

 さて、江戸川の土手に立つ。やや遠く、川面を行く渡しと乗客の姿が見える。神妙な雰囲気で川を渡る人の姿がおもしろい。
 船着き場には簡単な桟橋がある。桟橋の木の柵(さく)に手を添えて船を待つ時間がうれしい。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年4月21日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 広告募集 | 問い合わせ | プライバシー | 著作権 | リンク
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2004 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.