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お茶の水(2) 神田明神へ

 湯島聖堂の正門を出てすぐ左の角を曲がると昌平坂、聖堂の塀に沿ってぐるりとまわると、道路の反対側に大きな鳥居が見えてくる。通称、神田明神神田神社
 いわば「江戸っ子」の本拠地ともいえる神社。もともとは大己貴命(おおなむちのみこと)(大国主命)を祭ったが、後に江戸氏の氏神、江戸大明神を合祀(ごうし)、さらに、関東の人々に愛された平将門の霊の鎮守の明神となったという。

 湯島聖堂から、この神田明神までやってきたら、どうしても一息つきたくなる。そんなときに、おあつらえ向きの店が鳥居の左、明神甘酒の天野屋である。
 ここの甘酒は、店の地下にある土室(むろ)で作られた糀(こうじ)が原料となっている。この界隈(かいわい)、江戸時代には100軒ほどの糀の店があったという。天野屋の甘酒は、いわば生粋の江戸の味。この季節には、グラスに入った、冷やし甘酒もいい。
 甘酒の他に、お汁粉やくず餅の食べられる喫茶部は古美術店も兼ねていて、江戸、明治の器や、古い柱時計、明治の石版画、マッチラベルなどをながめながら、ひと休みできる。

鳥居の横に「江戸時代もさぞかし」という風情の茶店がある。散歩客の人気も高い 
(写真・横田正大)

 この店の「芝崎納豆」も有名で、その名は、神田明神がかつては芝崎村(現、大手町1の1の将門首塚の隣)にあったことを思い出させる。
 売店で、納豆は人への土産に、ひょうたん柄の扇子は、これからの浴衣姿の小道具にと入手、満ち足りた気分で神社を詣でる。

 ところで、私は碑でも社殿でも、ぐるりと後ろまでまわって見るのが好きで、神田神社も一回りする。
 人気(ひとけ)ない、裏参道の急な階段の手前には、スッキリしたデザインの灯籠(とうろう)型の碑が立つ。明治の浮世絵師・水野年方の碑で、弟子筋にあたる鏑木清方や荒井寛方らによって建てられた。

 藤棚の藤の花も散り、先週末からの神田祭もこの週末の式典が終われば、いつもの静かな境内となる。夏の到来である。

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年5月12日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から

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