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駿河台(1) ニコライ堂へ

 お茶の水、聖橋(ひじりばし)を湯島側から渡っていくと、青銅色のドームが見えてくる。日本正教会、ニコライ堂(東京復活大聖堂)である。
 ニコライ堂は明治24年、ジョサイア・コンドルの設計による。鹿鳴館や岩崎邸を設計した建築家である。
 ドームは関東大震災の被害にあって、改築されているが、ロシア正教会の建築を間近で見られるのは貴重である。
 月曜を除くウイークデーの午後1時からしばらくはステンドグラスの窓から光が差し込む聖堂内を拝観することもできる。

ニコライ堂は駿河台のシンボル。歩いていたら突然ヨーロッパの街並みになった 
(写真・横田正大)

 ニコライ堂の前の坂は紅梅坂、そのまま進むとお茶の水仲通りに突き当たる。小さな八百屋さんがあったりバーがあったり、下町の姿が残っている。
 道を右に行くと左手角に中華料理屋がある。ウインドーをのぞくとメニューに湯麺(たんめん)がある。それだけで私など「正しい中華そば屋さん」と思ってしまう。

 その角を曲がると、紅梅通り、いかにも駿河台、学生の街の匂(にお)いがプンプンしてくる。カレー屋あり、洋食屋あり、居酒屋あり、そしてなんといっても、楽器店が、ここにも、あそこにも。

 そういえば、もう、ずいぶん昔、この駿河台に楽器を見に来るだけで通った。ウインドーの中で金色に光るサックスやトランペットをじっと見つめていたものだ。
 現在、紅梅通りの楽器店はギターが中心。店の中から「試し弾き」の音が聞こえてくる。

 紅梅通りが終わる少し手前右側に細い路地がある。「新堀ギター音楽院」の看板が立つ。その路地をのぞくと、スペインの洋画家、ホアン・ミロの例のサインの文字でMiroとある。「駿河台遺産」の一つ、画廊喫茶ミロである。
 店内にはミロのリトグラフ作品が飾られ、白いカバーがかけられた椅子(いす)もいかにも良き時代の学生街の喫茶店そのものである。昭和30年の開店という。

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年6月2日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から

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