美術館が暗いのには、三つの理由が考えられます。
第一。美術品を退色(色がさめていくこと)から守るため。美術品は人のお肌同様に紫外線に弱く、美術館では紫外線をカットした照明器具を使います。それでも、長期間照らされると、美術品の色は何万分の一ずつ消えていくのです。そこで、美術品の材質によって適正なルクス制限をします。一般的に、曇り空の屋外は1万ルクス以上あると言われますが、館内では古美術の絵画作品などで150ルクス程度にします。染色品などは特に色あせしやすいのでさらに照明を絞るほか、浮世絵版画も染料を使っているので、100ルクス程度の薄暗い照明にします。
第二。作品に集中させるため。周囲を暗くすることによって、作品自体に視線を向けさせます。明るいと、どうしても周りの壁や展示室全体の様子が目に入り、鑑賞に集中しにくくなります。そこで、スポット照明で浮き上がらせると、作品そのものに目がいくようになります。
第三。皆さんの意識を日常から非日常へ誘(いざな)うため。展覧会場はそもそも非日常的なハレの空間。美しい作品で囲み、心を和ませてあげたいというのが主催者の気持ちです。そのため明るい生活の場から心落ち着くやすらぎの場へ誘うためにも薄暗くするのです。
このように作品の保存と演出のために薄暗いのであって、決して意地悪のためではありません。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)