美術館のマナーとして静かに作品を鑑賞する、というのがあります。これは展示室で大声で話をすれば、他の人の迷惑になりますし、走れば作品やガラスケースなどにぶつかって作品を傷つける恐れがあるので当然といえます。
しかし、息をつめて無言のまま何十分も作品と向き合うというのは、まるで、だるまさんの修行のようだと思いませんか。美術館は苦行を強いる場所ではありません。お友達と作品について感想を話し合いながら見るのは、とても良いことだと思います。ただ声を小さくした上で、静かに鑑賞していそうな人の前では話さない、という節度を持てばよいのです。
ところで、美術館は五感を楽しませるべき場所だと私は思いますので、視覚だけではなく聴覚を楽しませる工夫も、これからは必要だと考えます。かつて、私の美術館で建築の展覧会を開催した時、担当学芸員が環境音楽の作曲家に依頼して、展覧会のためのディスプレー・サウンドを作ってもらい、会場に流しました。建築模型や図面が音でディスプレーされ、とても心地よいものとなったことが思い出されます。
これからの展示会にディスプレーは重要な役割を果たしますが、音もその要素に加えてください。ただし、作曲を依頼するには経費がかかり、展示プランをかなり早めに作って具体的な形を作曲家に見せてイメージをつかんでもらう必要があります。この二つをクリアできればよいのですが……。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)