美術館では、美術品を知識として見てほしくないのです。あなたの感性で作品と直に接してほしいのです。そのためには、作者名や作品名、作品が制作された背景といった文字情報は、本来は邪魔なのです。必然的に解説の文字は小さく、作品鑑賞の妨げにならないように作品の脇に小さく付けられるのです。こうした作者名などを書いた名札のようなプレートのことをキャプションと呼びますが、現代美術ではノン・キャプション展示が提唱されることもあります。題名や作者といった文字情報に左右されず、作品と直接対話すべきだと言う主張です。これは一理あって、私も現代美術には番号だけ付けて、あとはチラシに作者や作品名その他の情報を印刷し、欲しい人はそれと対照して見るというのもよいと思います。
しかし、キャプションを付けるなら文字は大きい方が見やすい。私はキャプション3点セットを提唱しています。作者・作品名のプレートは15×20センチ、作品解説はA4判、作家解説はB4判の巨大なキャプションをつけ、文字も大きく、総ルビにして難しい漢字を覚えてもらいます。ただし、これには難点があって、展示作品が多くなると、この巨大キャプション群が異様に目立つのです。読みたくない人は見なければよいのですが、この異様さをどうするかが現在の悩みです。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)