この質問はよく受けるのですが、答えるのに戸惑ってしまいます。というのは、企画展というのは、企画書を書いた段階で、重要な作品調査が終了している訳で、どこに何があり、どの作品を借用するかということがほぼ見えている必要があります。調査は1年で済むもの、10年かかるものなど様々。従って、企画展の準備を作品調査から考えると、2年とも10年以上とも言えるのです。
しかし、私の勤務するような公立美術館は単年度予算主義ですから、来年度の予算を組んで議会承認を経て初めて企画を実施できるので、建前上は準備に実際の経費を使えるのは早くても1年前です。ところが1年間で企画展が準備できる訳はないので、学芸員は何年も前から何種類もの企画案を自分の頭の中であたためながら作品調査を続け、作品が出そろったものから企画してゆきます。海外の美術館から作品をまとめて借用する海外展は、実現までに最短でも3年間は必要です。作品の選定や借用料、保険などの交渉に時間がかかる上、経費負担軽減のため国内数カ所を巡回させると、巡回館探しが必要となります。そのため2、3年先の企画となる訳です。
企画を立ててから、出品交渉、陳列プラン、運送計画、図録作成、宣伝計画など雑多な仕事が派生するので、日本の学芸員は雑芸員と呼ばれるのです。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)