父や祖父などが収集した出自のわからないお宝が、どんなものか知りたいと、美術館に相談されることがあります。美術館によっては、レファレンス・コーナーを設けて相談を受けているところもあるようですが、前回お話したように、作品の真贋(しんがん)に踏み込むと難しい問題があるので答える方も引き気味です。
私はこうした相談に対して、まず自分で調べてみることをお勧めします。そうすると、作品にも愛着がわくからです。まず、家にある美術品と同種の作品を持つ美術館の学芸員に問い合わせて、手ごろな参考図書を教えてもらいます。次に大きな図書館でそれを調べます。さらに一歩進むには近現代美術であれば東京都現代美術館の美術図書室、古美術ならば東京国立博物館の資料館で専門図書を調べます。そして、ある程度目処(めど)がついたら、実際の類似作品を見に美術館へ出かけましょう。我が家のお宝が調べる前と全く違って見えるはずです。
かつて当館で古美術相談日を設けた時、売り払いたい、修理したいという方もみえました。特定の業者を紹介するわけにもゆかず、売るなら素人が参加できるオークションを、修理は表具屋さんのリストを紹介しました。公的立場ではそれが限度で、具体的に答えられないはがゆさを感じました。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)