絵の額縁は衣装と同じで、その時代の流行や作者の好みに強く影響されます。バロック時代のものは重厚な額に、ロココ時代の絵は優雅な額に入れられますが、それは当時の鑑賞者である貴族たちの好みによっているのです。20世紀に入り、展覧会の時代を迎えると画家自らが額を選んで出品。そこから額も作品の内、と考える画家も出てきます。
一方、日本の戦前の前衛作家などはカンバスの入手自体に苦労したので、展覧会に立派な額を付ける余裕がなく、木端を打ち付けて出品しています。こうした作品を美術館で入手した場合、安っぽい木端の額も、この時代の画家の置かれた環境を伝える重要な資料とみて、極力保存しようとします。しかし、多くの場合、作品自体の傷みも激しいので修理し、その際に額も取り換えます。この時、貧しい時代の雰囲気を残し、しかも作品に似合った額を付けなければいけません。修理担当学芸員に課せられた役割は重大です。時にはフレーマーと呼ばれる額縁の専門家と相談して新しい額を工夫することもあります。
作品の借用の際は、額付きが一般的ですが、浮世絵版画の場合、作品だけということもあります。素描や版画の額装ではマットの色や大きさによって見え方が異なるので、慎重に選びます。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)