阪神淡路大震災で多くの文化財が被災し、地震に対する備えが美術館でも問題になりました。高価な免震ケースを購入した所もあります。ところが昨年の新潟県中越地震で、免震装置も直下型の縦揺れには効果がなく、国宝の土器が壊れる事態が起きました。
結局、見かけは悪いが旧来のテグスによる転倒防止が効果的だとの見方もありますが、天災のすべてに対応できないはがゆさが残ります。
火災に対しては、ハロン消火設備も環境破壊の元となるのでハロンに代わるガスが検討されています。
盗難に関しては収蔵庫、展示室はもちろん作品の移動中のセキュリティーには十分な注意が払われています。
しかし、万一の場合を考えて、収蔵作品に保険をかけたり、作品を借りる際に返却までの間保険をかけたりするのは常識です。幸い私はこの保険の支払いを受けたことがないのですが、特別展のたびにかけた保険料が捨てられていくようなむなしさを感じます。かといって保険をかけないで借用する自信はありません。
欧米では文化事業に対し、何かの時には国が保証する制度がありますが、日本にはなく、全く立ち遅れています。
美術品の消滅に対して高額な対価を払っても作品はもどりません。保険はあくまで修理してお返しできる保障でしかありません。
(ガイド 板橋区立美術館学芸係長 安村敏信)