勤め人が吹き込む息吹
朝8時15分、スーツ姿に軍手をはめ、ポリ袋を持ったビジネスマンたちが、続々と街に繰り出してきた。そろいのジャンパーで存在感をアピールするセイコーインスツル。百人を超える大所帯で街を闊歩(かっぽ)するのは、シャープ。日本IBM幕張事業所は、少人数ながらも、「拾ったゴミは自社に持ち帰って処理をする」と胸を張る。
昨年10月のこの日は各社の有志が参加する朝の一斉清掃の日。幕張新都心にオフィスや土地を持つ35社で構成する幕張新都心まちづくり協議会が2年前から年2回実施している。普段は顔を合わせることもない会社の違う人たちが、時折あいさつを交わしながら、駅周辺の歩道の脇や中央分離帯、公園に捨てられたゴミを拾った。
国際大通り周辺には、89年の「幕張メッセ」のオープン以来、富士通、NTTといった大企業が次々と進出した。今では中小企業あわせて4百社以上、約4万人が働く。ここ数年、複合型映画館や商業施設、ホテルなどが立ち並び、休日ともなれば、家族連れなどでにぎわう。とはいえ、平日は通勤時間帯を除けば、通りを歩く人もまばら。この街に勤めて7年になる中本晴常さん(53)は、いつも駅と会社の往復ばかり。「ふらっと入れる赤ちょうちんがないのが寂しいね」と笑う。
このような街を、働く人の手で温めていこう、という機運は、年々高まっている。昨年9月には、幕張メッセの呼びかけで集まった20人ほどが、よさこいチームを結成。10月末の千葉市のよさこい祭りに出場した。
地元の千葉ロッテマリーンズを応援にいく企画もある。空席が目立った平日のスタンドが、仕事帰りのビジネスマンで埋まるようになってきた。球団側でも、通勤定期を提示するとチケットが割り引きになったり、ビアスタジアムと名付けたイベントを企画したりしている。「街で働く人がチームを応援してくれるのは心強い」と球団広報。3月28日、千葉マリンスタジアムの06年シーズンが開幕した。街は一気に勢いづいてきた。
(野戸昌希)