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2006.7.26(水)更新  石原良純のあした天気に
石原良純のあした天気に
4度、登るバカ
題字・イラスト  井沢洋二
 &x士山を1度も登らぬバカ、2度、登るバカなんてことを言う。

 僕は先日、4回目の富士登頂を果たした。

 富士登山は、健康のバロメーターにもなる。

 前回は5年前、僕は富士山など朝飯前と軽い気持ちで山を登り始めた。ところが、出るわ出るわ、額に浮いた汗は流れて首に巻いたタオルを濡(ぬ)らし、Tシャツもパンツも池に落ちたほど濡れていた。急激な発汗は体の変調を知らせる危険信号。僕は、日頃の不摂生を富士の麓(ふもと)で反省した。

 今回はテレビの生特番で、突然、降って湧(わ)いたような富士登山。それでも、年初めから続けているジョギングの成果が生かされ、快調に歩みを進めることができた。

 登山の模様は、番組で生中継される。僕と局アナの2人ぽっちのために、約百人ものスタッフが、富士山の麓から山頂まで中継の準備をしているのは、とにかく全力を尽くす富士登山と共通しているのだ。

 あたりが明るくなった頃、7合目の山口山荘に到着した。上がりかけた小雨に、雨ガッパを脱ぐべきか思案している僕に、山小屋のおじさんがアドバイスしてくれた。

「箱根の山の真ん中に、芦ノ湖の湖面が見えた朝は、天気が下り坂」

 なるほど、足もとの黒い凸凹の山並みに、銀色の湖面が見える。悪天候をもたらす温かく湿った空気が光を屈折させ、普段は見えぬ湖面を出現させるのだろう。おじさんから、もう一つアドバイス。

「富士山の天気は、1とき、7たび、ひに3ど」

 富士山では、1時間に7回も天気がクルクルと変わることが、1日のうちに3度もあるのだそうだ。

 果たして大粒の雨は叩(たた)きつけるわ、大風は吹くわ、その後の天候は大荒れ。最後には吹き飛ばされぬように這(は)いつくばって山頂を極めたが、あたりはすっぽり深い霧に覆われて何も見えやしなかった。

 僕の4回の登頂のうち、天気は今日の荒天で2勝2敗。次はスパっと快晴の青空の下、富士山を登りたいものだ。

 僕はすっかり≠T度、登るバカを決めこんでいる。

いしはら・よしずみ 俳優・気象予報士。62年神奈川生まれ。84年デビュー。舞台、映画、テレビで活躍中。97年気象予報士に。「FNNスーパーニュース」でお天気キャスターを担当。

(2006年7月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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