ケルトの思い、紡ぐ音
一度演奏し始めると小休止どころか強弱さえなく、最後までフォルテシモで駆け抜けるバグパイプ。大地を揺らすこの音は、かつてスコットランド軍の士気を高めるために用いられた。また軽やかな舞踊曲は村人をダンスの輪に誘い込み、葬送曲は死者の魂を鎮めた。
口にくわえたブローパイプから、羊革製の袋がパンパンになるまで空気をためる。この袋がバッグ=バグだ。左腕で圧力をかけ、4本のパイプから同時に音を出す。左上に突き出たドローンというパイプが伴奏となる低音を出し、左腰あたりのパイプ、チャンターの穴を押さえたり開いたりしてメロディーを作り出す。
強弱の調整ができず、笛のように舌で区切りもできないので、細かい装飾音を多用してメロディーに変化をつける。その大きな音は、天気の良い日には2.5キロ先まで届くという。
バグパイプは中近東で生まれたとも言われるが、その起源には謎が多い。スコットランド、アイルランド、ブルターニュなど主にケルト民族の地に伝承され、18世紀初頭には、3本のドローンを持つ現代のバグパイプの形になった。ケルト民族の証しとも言える楽器だが、スコットランド分離運動の象徴として、演奏禁止となった時代もある。
民衆と苦楽を共にし、祖国の誇りを奏で続けたバグパイプ。哀愁を帯びたその音色は、今もケルト系民族の望郷の念をかき立ててやまない。
◆「スコットランドのバグパイプ−−ハイランドの風」
英国で唯一私兵を持つことを許されている、アソール公爵家に所属するパイパーであり、スコティッシュダンサーとしても名高いビル・クレメントの代表作=写真。伝統的なバグパイプの魅力を堪能できる。2000円。
提供
 カルタコム
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◆東京パイプバンド「A FAR EASTERN CEILIDH」
スコットランド民謡を中心に、「もみじ」など日本の童謡も取り入れた、同バンドならではの1枚。2000円。日本スコットランド協会で取り扱う。
◆東京パイプバンドの公演情報
5月2日(日)、午後1時と3時、東京都調布市多摩川4丁目の京王フローラルガーデン アンジェ(京王多摩川駅、TEL0424・80・2833)で演奏。入園料500円、小・中学生100円。
そのほか、セント・アンドリュース・ソサイエティや日本スコットランド協会主催のイベントにも多数出演。
◆東京パイプバンド
基礎からしっかり学べる。毎週(金)、東京都目黒区目黒1丁目のパイオニア本社ビル(目黒駅)で練習。初心者には、山根篤の自宅(TEL03・3322・5447、yamanex@bb.mbn.or.jp、明大前駅)で特別レッスンを行っている(隔週、実費)。
2年に1度、スコットランドのコンペに出場。スネアドラムのメンバーも募集中。入会金、会費無料。
◆高周波音
バグパイプは人の耳には聞こえないとされる20〜60kHzの高周波音を出すため、演奏を聴くことによってアルファ波が出てリラックスし、眠くなることもあるという。
◆チューニング
団体演奏はユニゾンが基本なので、音がそろわないのは致命的。工学博士である山根雅巳が発明した「YAMANEチューナー」は世界的に有名で、パイプバンドの必需品として用いられている。
◆スコットランド情報
東京都渋谷区広尾5丁目の日本スコットランド協会(広尾駅、TEL03・3473・1891)では、スコットランドの歴史や文化に関する資料を多数そろえている。開館時間は(月)(水)(金)の午前10時半〜午後5時。
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世界を目指す2代目
山根 篤(45)
楽器が世界への扉を開いた。
風に乗るケルトの旋律。独特の音色に夢中になった。19歳で、父が主宰する東京パイピングソサイエティ(現東京パイプバンド)に入団。本場グラスゴーに留学し、世界中から集まるパイパーたちと共に腕を磨いた。
父雅巳(74)は、日本人パイパーの草分けだ。40歳で楽器を手に入れた時、日本には教わるべき先達がいなかった。「民族楽器を中途半端にはやれない」。グラスゴーで学び、74年、来日中のスコットランド人らとバンドを結成。日本にバグパイプの種がまかれた。
パイパーたちは海を越えて、手助けにやって来た。究極の演奏を聴かせた巨匠ビル・クレメント。パイプの魅力をとことん教え、世界を目指すよう強く勧めた実力派マイケル・グリーン。
4年に及ぶマイケルの指導で、バンドは飛躍的に実力を伸ばした。89、90年の香港国際コンペで連続優勝。ニューヨークのセントパトリックデーパレードでは、約200チームの中から最優秀バンドに選ばれた。ケルト文化の色濃いフランス・ブルターニュ地方からは、極東にもパイパーがいると、地元の大会への出場依頼が舞い込んだ。
「パイプには、仲間を引き寄せる力がある」と篤は言う。
現在、北海道余市町、山形県鶴岡市、愛知県豊橋市で、篤らが立ち上げに協力したバンドが活動している。パイプに魅せられ、篤を訪ねる者も後を絶たない。
雅巳がまいた種は実を結び、この国に根を下ろし始めている。海外でも認められた日本人のバグパイプを、文化として根付かせたい。父から代表を受け継いだ、2代目の志は高く、熱い。
好きです!
俳優・山本 耕史さん
テレビ番組の取材で本場の教師に習い、コンテストに出て「筋がいい」と弟子入りをすすめられたのはうれしかった! バグパイプを愛する人々の優しさは一生忘れない。久しぶりにパイプを吹いてみます。
これまでのコラム
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
●タブラ(インド) 吉見 征樹
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