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2004.4.22(木)更新  民族楽器の旅
 
民族楽器の旅    ケーナ(ペルー)  
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懐かしさ生む風の響き

 南米のアンデスで先住民に受け継がれてきた縦笛、ケーナ。その素朴な音色、哀愁漂う響きは、優しく吹きかける風のように、聴く人の心の中にすっと入り込む。日本を遠く離れた土地で生まれたにもかかわらず、ふと懐かしさを感じさせる。なぜだろう。

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 ケーナは、カーニャという竹に似た肉厚のアシで作られるが、今は竹製や木製も多い。古代の遺跡では動物や人間の骨製のものもある。構造は至ってシンプル。長さ40センチ弱の円筒に吹き口をU字形に削り、表に6個、裏に1個の穴を開けただけだ。

 決まった寸法はなく、穴の位置や大きさ、筒の長さなどは、経験を積んだ作り手の試行錯誤で決まる。素材そのものの形や性質を生かして作るため、同じ笛は2度と作れない。自然のものに手を加えすぎない作りが、素朴な懐かしい音色を生み出すのだろうか。

 そして日本古来の縦笛、尺八との共通点が多いことも興味深い。尺八の穴は2個少ないが、西洋の縦笛と違ってリードがない構造や構え方、吹き方もほぼ同じだ。アンデス地方の先住民と日本人は同じ祖先を持つという。尺八は中央アジアから仏教と共に伝わったとも言われるが、ケーナの音色が日本人にも郷愁を感じさせるのは、アンデスの人々との太古からのつながりのせいかもしれない。


◆アントニオ・パントーハ「永遠なるケーナ」
 ペルー南部出身のケーナ奏者の名録音を集めたCD。「コンドルは飛んで行く」「花祭り」など、素朴で伸びやかな音色の15曲。1995円。

◆田中健「ひととせ−−春夏秋冬」
「ひととせ−−春夏秋冬」  八ケ岳高原で収録したCD=写真。オリジナル曲や「浜辺の歌」「コンドルは飛んで行く」を含む全11曲。2500円。

 

◆マルカマシス ストリートライブ
 昨秋、東京都から「ヘブンアーティスト」に認定された、ペルー出身の2人組のフォルクローレグループ。4月23日(金)と30日(金)、正午〜午後2時、3時〜4時、東京・吉祥寺の井の頭公園野外ステージ。24日(土)、5月3日(月・祝)、午前10時〜午後3時、東京湾アクアラインの海ほたる。問い合わせはニナさん(TEL090・6486・1632)。


◆フォルクローレ
 語源は「民間伝承」を意味する英語の「フォークロア」。南米では特に音楽のことを指す。民謡や民俗音楽だけでなく、それに根ざした大衆音楽全般も含めた呼称となっている。

◆コンドルは飛んで行く
 ペルーの作曲家ロブレスがアンデス地方に伝わる旋律を基に作曲。1970年にサイモン&ガーファンクルが歌い、フォルクローレの代表曲として世界中に知れ渡った。


◆アルコ・イリス川崎店
ペルー家庭料理  川崎市幸区中幸町3丁目(川崎駅、TEL044・541・4572)。魚介類のレモンソースあえ「セビーチェ」(1100円、写真手前)、鶏肉のイエローペッパーソース煮「アヒ・デ・ガジーナ」(850円、同奥)など、ボリュームたっぷりのペルー家庭料理が手頃な値段で食べられる。午前11時半〜午後10時半(ランチは2時まで)。無休。4月末まで「マリオンを見た」と言えば料金1割引き。

◆エルパティオ
 東京都新宿区西新宿7丁目(西新宿駅、TEL03・3363・6931)。中南米を中心とした料理と音楽を楽しめるレストラン。午後6時〜11時半。(日)(祝)休み。
 4月24日(土)、28日(水)、30日(金)、「フォルクローレの夜」と題したライブを開催。ライブチャージは1785円〜。詳細は問い合わせを。


◆音楽センター・フォルクローレ教室
 東京都新宿区大久保2丁目(新大久保駅、TEL03・3208・8377)。ケーナ、チャランゴ、サンポーニャなどを個人レッスンで。講師は「グルーポ・カンタティ」メンバーのエルネスト河本、島田静江ら。入会金5000円、月3回1万2600円〜。ほかにグループレッスンも。

田中 健

演技も音も、思い伝える「道」
田中 健(53)

奏  インカ帝国が築いた幻の空中都市、マチュピチュ。霧に包み込まれた神秘的な光景の中で、美しく、どこか物悲しい音色を耳にした。誘われるままに近づいていくと、そこにケーナを吹いている人を見つけた。83年、旅行で訪れた時のことだった。

 「心を癒やす風のような音」に魅力を感じた。仕事の時も持ち歩き、車での移動中や撮影の合間など、時間があれば練習に励んだ。教えてくれる人はいないため、全くの独学。唇の位置が少し違うだけで、音が出たり出なかったりする。安定した音が出せるようになるまで、3年かかった。

 プロの演奏家としての活動をスタートしてからは、代々木公園や多摩川土手、ロケ地近くの森などで、木や月に向かって吹く練習をするようになった。雑念を取り払って集中し、思いが届くように、心を込めて吹く。

 「テクニックはもちろん必要だけれど、思いを伝えることの方が大事だと気付いたんです」

 演技か、音色か。思いを伝える方法が違うだけで、俳優の仕事とケーナ演奏という二つの道は、一つの道につながっている。


エール 私の作品です

俳優・平泉成さん  十数年前にドラマで共演した時、ケーナを見せてもらったのをきっかけに、健さんのケーナを制作するようになりました。作ったケーナは千本以上。それでも、いいケーナをすばらしい演奏者が吹くのを聴くと、「笛が生きている」と感じます。多くのお客さんが聴いてくれることが、材料となっている竹への恩返しだと思っています。


 これまでのコラム
 
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
 ●タブラ(インド) 吉見 征樹
 ●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
(2004年4月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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