心揺らす不変の単純さ
誰もが一度は手にしたことがあるタンバリン。古くなった穀物用のふるいなどの木枠を使い、なめした羊や牛の皮で片面を覆ったものが起源とされる。その歴史は遠く紀元前数千年までさかのぼる。西アジアのアッシリアやエジプトなどの古代王朝で使われ、旧約聖書に記されている。古くから世界中に伝わり、ヨーロッパ、中国、アメリカなど、各地に仲間が広がっている。
長い歴史の中でも形がほとんど変化することがなかった珍しい楽器だ。ジングルと呼ばれる小さな金属盤が付いているもの、また皮を張らないものもある。ダンスのリズムを刻んだり、儀式に使われたりと、生活に根ざした楽器として使われてきたが、モーツァルトらの作曲家によってオーケストラ作品でも使われている。
* *
南イタリアに伝わる民族舞踏音楽「タランテラ」もタンバリンが使われる音楽の一つ。8分の6拍子というテンポの速いリズムが特徴のこの音楽は、毒グモ、タランチュラに刺された時、この音楽で踊り狂うことで汗と一緒に毒を体外に出すためのもの、という由来も持つ。
「打つ」「振る」「こする」−−。単純に音を出せる楽器だからこそ、体で感じ、心を揺さぶる音として、現在に至るまで人々の暮らしに寄り添い続けている。
◆CD「ベスト・オブ・サンバ」(写真)
カーニバルなどで知られるサンバ。
パンデイロというブラジルのタンバリンやスルド(大太鼓)など打楽器によるリズムを。全20曲。1890円。
上記CDを「世界の民族音楽CD通販 カルタコム」から5人にプレゼントします
応募は10月14日まで

提供
 カルタコム
|
◆CD「イタリアの伝統舞踊 タラントゥラ」(写真)
イタリアの伝統的踊り、タランテラを「タランタ」「ピッツィカ」「シェルマ」の3つの形式で収録。タンバリンやギター、バイオリンとともに、テンポの速い活発なリズムが楽しめる全10曲。2310円。
◆映画「血の記憶」サウンドトラック(写真)
イタリア南東部のサレントを舞台に、タンバリン奏者の兄弟を描いた映画「血の記憶」。
ビデオ、DVDの発売はされていないが、映画で音楽を担当するほか、主人公も演じた「グルッポ・ゾエ」のメンバーによる演奏が収録されたサウンドトラック。2625円。問い合わせはランブリング・レコーズ(TEL03・6415・6069)。
◆世界の太鼓資料館「太鼓館」
東京都台東区西浅草2丁目(田原町駅、TEL03・3842・5622)。世界各国から集めた太鼓約200点や関連資料を展示。世界に分布するタンバリンが見れ、実際に打つことができるものもある。
300円、小学生以下150円。(月)(火)休み。営業時間は午前10時〜午後5時。
◆パンデイロ
直径30センチ前後のブラジルのタンバリン。チューニングができ、ジングルの付け方が通常とは逆なのが特徴で、ポルトガルから渡ってきたとされ、ブラジルで発展した楽器。
ブラジルの室内楽ショーロをベースにしたバンド「レンブランサ」での活動や、多くのアーティストのライブやレコーディングに参加している長岡敬二郎さん(http://www006.upp.so-net.ne.jp/nagaoka/)が、世田谷区、大田区でパンデイロのプライベートレッスンを実施。問い合わせはEメールで(nagaoka@df6.so-net.ne.jp)。
◆タンバリンとオーケストラ
18世紀後半のモーツァルト以来、民族音楽の影響により、東洋の雰囲気や舞曲の感じを出すため、オーケストラにもタンバリンが使われるようになった。
来年3月27日(日)午後2時、東京・西新宿の東京オペラシティコンサートホール(初台駅)。東京フィルハーモニー交響楽団が「オーケストラファンタジー ジプシーバイオリンの夢」と題したコンサートで、タンバリンを使ったベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」などを。S5500円、A4500円、C2000円。問い合わせはチケットサービス(TEL03・5353・9522)。
|

手作りの楽器で思い奏でる
アルフィオ・アンティコ(47)
イタリア・シチリア島の自然の中で18歳まで羊飼いとして暮らしていた彼にとって、タンバリンは自分の魂そのもの。物心付く前から祖母があやしてくれたこの楽器は、いつもそばにあった。その後、フィレンツェの街角で演奏していた時、俳優であり歌手のピノ・デ・ビットリオと運命的な出会いを果たし、演奏家として表現し始める。
「人間の心の中にある愛や悲しみなどの感情を込めた音を出したい」と演奏する姿勢に共感するアーティストは多く、「タランテラ」だけでなく、イタリアンロックやオペラとも共演する。今年7月、「〈東京の夏〉音楽祭」で共演したマルコ・ビズリーは、「アルフィオは技術だけでなく、聞く者に深く感じさせる、自分の音楽を持っている」と語る。
彼の持つタンバリンは、直径90センチのものまで大小さまざまで、すべて手作り。かつての生業(なりわい)でもあった羊の皮を使い、サイズ、音質などを丁寧に調整しながら作り上げていく。
タンバリンとその音色を慈しむような表情を見せながら、全身を使って演奏する姿は、シチリアから広々とした海に向かって、秘めた感情を解き放つかのようだ。
エール 情熱的な演奏
エッセイスト パンツェッタ・ジローラモ さん
タンバリンは、南イタリアの人にとって生活に密着した親しみのある音楽を奏でる楽器です。以前に見た演奏では、その技術だけでなく、指先から血が出るほど叩く情熱的な演奏に圧倒されました。タンバリンを使った南イタリアの伝統的な音楽「タランテラ」のリズムを聞くと、ナポリの景色や、子どもの頃、楽しみにしていたお祭りを思い出します。
これまでのコラム
●二胡(中国) 賈 鵬芳(ジャー・パンファン)
●タブラ(インド) 吉見 征樹
●バグパイプ(イギリス) 山根 篤
●ケーナ(ペルー) 田中 健
●ジェンベ(マリ) 池田 正博
●馬頭琴(モンゴル) チ・ブルグット
●ツィンバロム(ハンガリー) 斉藤 浩
●古筝(中国) 伍芳(ウー・ファン)
●ウクレレ(米国) 高木ブー
●津軽三味線(日本) 上妻宏光
●アルプホルン(スイス) 玉川アルプホルンクラブ
●アルパ(パラグアイ) 上松 美香
●ディジュリ ドゥ(オーストラリア) 哲J
●ビリンバウ(ブラジル) 丸山祐一郎
●ウード(チュニジア) 常味 裕司
●マラカス(キューバ) BON−BON BLANCO
●ジェゴグ(インドネシア) スアール・アグン
●チャング(朝鮮半島) 康明洙
●スチールドラム(トリニダードトバゴ) カリビアン・マジック・スティール・ドラム・オーケストラ
●カンテレ(フィンランド) はざた雅子
●マリンバ(グアテマラ) 小竹 満里
●バンドネオン (アルゼンチン) 小松 亮太
●ドンブラ (カザフスタン) アイティムラティ・トルハリ
●尺八 (日本) 金子 朋沐枝
|