襲名披露興行真っただ中の18代目中村勘三郎さんに、歌舞伎座の魅力、見どころを聞いた。
先人たちの汗が染みついている歌舞伎座には、他の劇場にはない特別な思いがある。先代・勘三郎や諸先輩によって何度も繰り返し演じられてきた名作を、歌舞伎座で自分が舞うときは、かつて舞台の袖から目にした先人の姿が必ずといっていいほど浮かんでくる。時には、感慨に浸り、踊りながら涙が出るほどだ。その見えない力を、「歌舞伎座の怪人」と呼んでいる。
客席にも魅力を感じる。両脇に桟敷席があり、観客に囲まれている雰囲気がたまらなく好きだ。一幕見席にいる立ち見客も歌舞伎座ならでは。同じ幕を10回以上見ている常連がいて、先代の教えで、常に目を配っている。ここの入り具合が、「幕の人気のバロメーター」。人気者となった今でも、売れ行きは人一倍気にする。
歌舞伎は、「伝記ではなく、今を生きる人間がやるドラマ」。セリフ回しや「型」も大切だが、それ以上に「主人公がどう生きるかという人間ドラマとして見てもらいたい」。
ニューヨーク公演や「コクーン歌舞伎」など常に新しいことに挑戦してきた。伝統ある名前を襲名しても、その気持ちは変わらない。来月の襲名披露興行では、1年8月に歌舞伎座を沸かせた劇作家・野田秀樹の作品を再演する。